部誌18 | ナノ


”むさい“の二人



 白い煙と食欲をそそる独特の匂い、そして厚みがある肉が目の前に広がっている。
 マジフト部の打ち上げにと開催された寮長主催の焼肉大会に参加していたなまえとエペルは、久しぶりに見た肉の数々に目を輝かせていた。
 入学してからというもの美を追求するポムフィオーレ寮へ選ばれたのはいいものの、寮長であるヴィルに肉を禁止されて食べる機会が減ったのは入学して早々のことだった。
 
「罪の味がする……」
「でも美味いべ」

 口に入れた瞬間溶けていく肉は何度食べても飽きはこない。
 NRCに入る前は食事制限などすることなく好きなものは好きなだけ食べて運動して、そしてまた食べるという欲に忠実な生活をしていたくらいなのだ。
 普段口にしている肉よりも値段と質が明らかに違う肉を比べるのは無粋というやつで、そして食べる機会が限られている今、なまえはひたすら肉を堪能するしかない。

「肉と米だけで無限に食える……」

 右を見ても左を見ても同じような食べ方をしているマジフト部の連中は数多くいて、やっぱりこれが普通だよなぁと今更ながらに思う。
 すでに見慣れた世界的有名なヴィル・シェーンハイトという我が寮長様の食事がやたらと緑に溢れた食材なだけできっと俺やエペルは普通なのだ。だって肉は美味い。レオナ先輩だって公言するくらいだし。好きなものは肉って。

「毎日肉祭り開催してくれねえべかな」
「絶対参加する」

 遠くでラギー先輩が野菜がどうのってレオナ先輩に言っているのを聞き流しながら、エペルと二人で無言で肉をつつき合う。
 美味い、美味いと言いながらひたすら肉を食べ続ける二人を遠くから先輩たちが引いているのをなまえとエペルが気付く筈もなく。

 寮に帰ると服や髪にぷんぷんと臭いをつけたなまえとエペルを見たヴィルが二人に雷を落とすのは、あと二時間後くらいあとのお話。



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