部誌17 | ナノ


雨上がりのにおい



 雨は嫌い。お外で遊べないから。
 でも雨が止んだあとは好き。楽しいことがいっぱいあるから。

「ながぐつよし!」
「きゃん!」
 お気に入りの長靴を指を差す。
「さんぽのおともよし!」
「きゃん!」
 今度はポシェットに入っている散歩グッズを差す。
「おかだのおかしももった!」
「きゃん!!!」
 今日公園で遊ぶオモチャを掲げればオカダが元気よく返事をする。
「おかだのカッパよし!」
「キューン……」
「ヤでもだめ!」
 オカダの嫌そうな顔を無視してオカダに着せたカッパを指す。
 忘れ物がないことを確認して顔を見合わせてにっこりと笑う。
「よしおかだ! こうえんいくぞー!」
「わふ!」
「おかあさんいってきまーす!」
 リビングにいる母にちゃんと声をかけて玄関を出た。
 一歩外に出れば、水の匂いがした。晴れて間もない太陽の眩しさにオカダと一緒に目をキュッとつぶる。だからといってそこで止まるなんて考えておらず、目が慣れてくればすぐさま走り出した。
 雨が染み込んだコンクリートには水たまりがいくつもできている。
 その水たまりにめがけてジャンプする。バシャンッと水しぶきを上がった。上がった水しぶきが太陽の光でキラキラと輝いている。しかし、水しぶきの勢いがありすぎたようで隣のオカダにまでかかってしまった。こうなるのを見越して出掛ける前に母からカッパを着せられたのだ。そのおかげでオカダがずぶ濡れになることはなく平然としている。むしろ水たまりにはしゃぐ姿に呆れているようにも見えた。なんだか小馬鹿にされている気分になる。
「おかだだってこのまえにみずたまりにつっこんでおじちゃんのふくよごしたくせにー」
「きゃふ……?」
 なんのことやらとあざとく首を傾げるオカダに長靴で水をかける。抗議の声が上がったけれど無視して水たまりから出て行く。水たまりで遊んだせいか水の匂いがさらに強まった気がした。



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