部誌13 | ナノ


すきの温度



 起きがけに気づくと足先をすり寄せていることに気付いて、夏が終わってしまうのだなと思った。
「おはようございます」
 行儀のいい仰向けで寝ていた隣の男がごろりと寝返りを打ちつつ、ふくらはぎから熱を吸い取っていた私の足先を挟んでくる。うにうにと挟まれた足の指を動かすとカーテンの隙間から細く入る陽にわずかに照らされた琥珀色の瞳がくすぐったげに細められた。



「おはよう……起こした」
 起こしてしまった、と言うといいえと返しそうだし疑問符を付けても同じ結果になりそうなのでこういうときどうしてももごもごと眉をしかめることになる。
「いえ、どのみちちょうど起きる頃合でしたから」
 うーん……。
「どうしました」
「いや……」
 結局言わせてしまった、と思いつつ、誤魔化し混じりに天草のしろい髪が寝乱れているのを手ぐしでとこうと手を伸ばしたら、何だと思われたのか布団の中で両手を広げられてしまった。
「四郎くん、その手は何ですか」
「こういうことかと思ったのですが」
 違いましたか、と言われる前にその腕の中に潜り込む。
 背に回された腕も、額に寄せられる頬もあたたかい。
 そうこうやって二度寝しているうち、冷えていた足先はすっかりぬくまっていた。



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