部誌13 | ナノ


しらたま



 帝都東京の夜は長い。否、どうかしたら夜だけが存在しているような気さえする。
 本来の聖杯戦争とは程遠い代物である上に、一般人には怪奇として目撃談さえあるというのに、わずかな昼の日差しには一片の血臭さえ滲まないのが、仕掛け人の白々しさの証左にさえ思われた。
 頬杖をついて眺める窓の外だとて、昨日はサーヴァント同士、あるいはサーヴァントと残念生命体ノッブとの戦闘の舞台となっていたはずなのに、私は好きな男とこうして膝を突き合わせてカフェと洒落込んでいる。これでいいのだろうか。まあでも良いと思う。なにせ今日は四郎のほうからお茶でもしませんかと誘ってくれたのだから!
 つまりはそう、デートである!

「ああ、ほら。見てください」
 向かい合わせになった席の向こうから、天草四郎が私に季節限定と書かれたメニュービラを見せてくれる。この店はメニューをひとりひとつくれるタイプの店にも関わらずそうするのは、まるで早く私に見せたいからだとでもいうようで、私は少し、いやかなりそれがくすぐったく愛おしい。

 今日のおやつは抹茶白玉クリームあんみつに決まりました。



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