部誌13 | ナノ


なまけ者のボクと、君



「おーい。いつまで寝てるつもりですかー?」

僕の横にしゃがみ込んだ彼女がそう声を掛けてくる。
もうとっくに起きてはいた僕はゆっくりと目を開けて彼女を見上げる。

「あんまり寝てると目が溶けちゃうよ」
「それ、泣いてる相手に言うやつじゃないの」

くすくすと笑いながら僕の寝癖を直す彼女に、僕は呆れたようにため息をつく。

「ふふ。気怠げな顔も素敵ですねー」
「はいはい。ありがとう」

にこにこと満足そうな彼女に寝床から起き上がった僕は、すでに用意されている朝食を食べに向かう。
そんな僕の後ろを彼女は笑いながら追いかけてくる。

「今日のは奮発してあるんですよー。お味はいかがですかー?」
「……いつもの方が良いかな」
「あらー。じゃあ、いつものに戻しますねー」

にこにこと僕が食べる様子を眺めている彼女に不満を伝えれば、彼女はおっとりと笑って頷く。
朝食もすっかり食べきって、さてどうしようかと考えながら欠伸を噛み殺す。
そう言えばいつもならもう彼女は仕事に出ているはずなのに、なんで今日は家にいるのだろう。

「んふふ。今日はお休みなんですよー」
「ふぅん」

僕の視線に気付いたのか彼女は食器を片付けながら笑っていう。
遅刻とかじゃないのなら、別に良いのだ。
ゆっくりといつもの定位置のソファーに腰掛け、ぼんやりと彼女が付けたままのテレビを眺める。

「あ、あ、しまった!」
「うわ、なに」
「コーナー始まっちゃうー!!」

ばたばたと突然小走りで来て、僕の隣に勢いよく座った彼女に僕は思わず飛び跳ねた。
彼女はそんな僕に気付いていないのか、テレビの画面をリモコンで切り替えている。

「ああああ…間に合ったぁ…」
「そんなにそれが見たかったの」
「んふふ。格好いいでしょー」
「はいはい」

きゃっきゃとはしゃぐ彼女がなんだか気に食わなくて、僕はソファに体を沈ませて目を閉じる。
君が仕事に行かないなら、一緒にゆっくりできると思ったのに。
彼女は最近、テレビの中の彼にご執心だ。

「あれ?不貞寝ですか?」
「うるさいなぁ…」
「あー、ごめんごめん」

コーナーが終わったのかなんなのか、僕の頬を突く彼女の手を振り払い、彼女はすまなさそうな声で困ったように言う。
そんな声を出しながらも多分笑ってるのだ。僕は知っている。

「眠いなら寝てれば良いよ」

そう言って彼女は笑って、テレビを消すと鼻歌を歌い始めた。



「そろそろ日も暮れますよー?」

特に何もするでもなくソファに座ったままいる僕に彼女は顔を覗き込みながらそう言い、夕日が差し込む窓に視線をやって目を細めた。

「今日はいつにも増しておなまけさんですねぇ?」
「余計なお世話」
「ふふ。そんなところも好きなんだけどねぇ」

楽しそうに笑って彼女はカーテンを閉め、僕の隣に戻ってきた。

「そろそろお夕飯にしますか?」
「って言いながらもう準備できてるんでしょ」
「ふふふ」

小首を傾げる彼女にソファから立ち上がれば、彼女は笑いながら僕の後ろを付いてくる。

「さて、どうぞ」
「どうも」

彼女が勧めてくれるのを大人しく食べる。

「美味しい?」
「普通」
「ふふふ」

僕の顔を覗き込んでくる彼女の顔を見つめ返せば、彼女は満足げに笑った。

「ごちそうさま」
「もう寝るの?」
「そうだよ」

食べ終わって席を離れる僕に彼女は首を傾げて付いてくる。

「ん。じゃあ、おやすみ」
「君は寝ないの」
「私はまだ寝ないよー」
「ふぅん。おやすみ」

彼女が撫でてくれる手にすり寄って僕は目を閉じた。



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