部誌1 | ナノ


まやかし



大谷吉継は人を信じぬ。
己の体に現れた業の病の自分から人を信じるのを止めたのだ。
その身体がまだ健常であったころ、彼の周りには人がいた。
だが業の病がわかった時、人はまた一人と離れ、彼の周りに人はいなくなったのだ。
そのとき彼は悟ったのだ。

【人の絆のなど所詮幻まやかしだと】

一人であることに傷つきはしなかった。
所詮人など一人なのだ、傷つく必要など皆無。
誰かと繋がりを持つ必要もない。
どうせ壊れるものなのだ。

「だからナァ、ヌシの言うことは嫌いよキライ」

ニィと吉継は笑う。
前に居るのは東将権現。
あまたの光と絆を掲げて天下を狙うもの。
大谷吉継の、大嫌いな人間。

「…三成と刑部のそれは、絆ではないのか、それこそが」

家康の言葉を吉継は手でさえぎった。
その手に呼ばれるように、水晶がふわりと血を垂らしながら舞い上がる。

「ヌシの言うことなすこと全てまやかしよ。我がそれを証明してやろ」


そう、大谷吉継と石田三成の関係は絆ではない。
そんな簡単に消えるような、まやかしではない。
そんな、軽いものでは、ないのだ。
二人の関係は、そう――――




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