部誌1 | ナノ


薔薇



ふと目が覚めたら夕方でした。
ぼやぼやする目をこすりながら、ベッドがら起き上がります。

「おかいもの・・・いかなきゃ・・・」

ぽわわとあくびをしながら階段を下りて行きます。
もちものを確認して、お買い物するスペースを作ります。
そしてさぁ商店街に、とドアノブに手を掛けた瞬間でした。

「オーッス!!なまえ!!」

ドアが勢いよく開き、アセクサが入って来ます。
以前はちゃんとノックをして入って来てくれたのに、最近は仲良くなりすぎてノックすらしてくれません。
だから本当にびっくりすることもあるんだけど、まぁいいかと放っておいたんですが。

「・・・アセクサさん・・・」
「なんだよなまえー!さんなんて付けて知らないやつみたいじゃんかー!」

プンプンしてるアセクサだけど、プンプンしたいのはこっちです。
アセクサが勢いよく開いたドアは見事に私の顔面に直撃してきたのです。

「人のお家に入る時はノックする!マナーでしょ!」
「うおおー!なんだなまえ!プンプンしすぎで顔が真っ赤だぞー!」
「アセクサが開いたドアが当たったの!プンプンしすぎじゃない!」
「な、なんだとー!」

結局私もプンプンしながらアセクサを叱ります。
アセクサもプンプンしながら対抗してきます。

プンプン
プンプン
プンプン
プンプン

「ダァーッ!」
「うわ!」

しばらく二人でプンプンしあっていたのですが、いきなりアセクサが叫びます。

「そうだなまえー!プンプンしてる場合じゃないぞー!」
「う、うん、なにかな・・・」

どきどきする心臓を押さえながら、答えます。
さっきまでプンプンしていたアセクサが、急にウキウキし始めました。
そしてついてこーいと家から飛び出して行ってしまいました。

「アセクサー!まってよー!」
「こっちだなまえー!」

どたばたと二人で村を走って、辿り着いたのはお花畑。
私の他にもう一人いる人間の住人さんがお世話している花畑です。
お花以外にも、ツツジの花を植えていたり、特産品以外のくだものを植えていたりします。

「なまえー!これ!見てみろよー!」
「おおお!!」

たくさんのお花が咲いている中に、ひとつ、変わった色のユリが咲いていました。

「すごーい!あかいろ!はじめてみた!」
「なー!すごいだろー!アイツガーデニング名人だなー!」

あかいユリは島ではよく見かけたけれど、この村で咲いたのは初めてです。

「なまえー!オマエも何か咲かせろよー!」
「私はガーデニングは向かないの!魚釣りとか虫取りなら出来るけど・・・」

もじもじしながらつぶやく私に、アセクサはしばらくう〜んと悩んだ後、ピコーンとひらめいたようです。
そしていきなりスコップを取り出して、シャキーン!と決めポーズ。

「安心しろなまえー!なまえがガーデニングが苦手なら、変わりにオイラが花を咲かせてやるぞー!」
「ほ、ほんと!?」
「おー!ちょっと時間はかかるかもしれないけど、絶対咲かせてやるからなー!」

そうアセクサが約束してくれて、二人でえへへと笑いながらハッピーしたのです。


それから一週間ぐらい経ったある日。


「なまえー!プレゼントだー!ダアーッ!」
「えっ、あっ、あー!!」

やっぱりノックもせずに私の家に入ってきたアセクサ。
ノックしてというプンプンのしあいっこは忘れていたみたいです。
けれど、その手には約束通り、この村でも島でも見た事がなかった、とっても可愛らしいピンク色をしたバラを握っていたのでした。




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