部誌1 | ナノ


薔薇



褐色の肌に、汗の粒が浮く。
手触りのよいその肌は、何度指を這わせても飽きることはない。
桃色の胸の突起をつまむと、耳になじむ嬌声が聞こえてくる。

「君の声は小鳥のようだね」

腕の中に抱く青年は、見た目とは裏腹に、大変かわいらしい声をしている。
――以前の飼い主に、声帯に手術を施されたと契約書には記載されていた
変声期を迎える前に行われたというその手術のおかげで、青年の声は、まるっきり少年の頃のままなのだ。

青年の、快楽の熱にうなされた青い瞳がアドルフを見上げている。
その瞳も、アドルフのお気に入りであった。

アドルフはこの青年に名前をつけなかった。
呼ぶ必要があるときは、子猫ちゃんだとか、愛しい子だとか、そんな甘ったるい言葉で呼んでいる。
それでとくに不便は感じなかった。

「さあ可愛い子……私の前で、脚を開いてみせて?」

アドルフは少し青年から離れて、クッションを抱えて、甘い吐息をつく青年にそう言った。
NOと言えるわけもない青年は、その命令に素直に脚を開いてゆく。
青年に焦らすという意図があるのかはわからないが、ゆっくりと、まるで恥じるように脚は開かれた。
中心で起立する性器の先端には、先走りが光る。

「いい子だ……」

そう言ってまた肌に手を這わす。
触れるのは、太腿の内側。敏感な反応を示すその薄い皮膚の上には、白の色素で刺しこまれた薔薇の蔓があった。数輪の花が咲くその刺青は、半年前にアドルフ自らが施術したものだ。
すっかり肌に馴染んだそれは、青年の脚をより艶めかしく演出している。
執拗にそこばかり愛撫するので、青年はもじもじと腰を動かし始めた。

青年には快楽に素直に、貪欲にと教育してある。
アドルフは青年に微笑みかけると、青年の肌の色とは正反対の真っ白な手で、青年の性器を扱き出した。
ゆっくりとした動きで始まったその感触に、青年の口から吐息が零れる。
だが青年の方も、主人を満足させなくてはいけないという使命がある。
ベッドの上で重なり合うように寝そべった主人の体を、痕をつけない程度に甘噛みしてゆく。
アドルフは唇を許しているので、口への愛撫も怠らない。

そう教育されてきたからなのだが、人一倍快楽に弱い青年は、アドルフの行う丁寧な愛撫に、すぐに根を上げてしまう。
アドルフの手をべとべとに濡らした頃、もう少しで達してしまいそうなことを伝えた。
アドルフは、青年にいい子だと囁き、キスを施す。

もう手で支えなくても十分に起ち上がった性器をひと撫でし、アドルフはあるものをベッドサイドのチェストから取り出した。
滅菌処理された袋からそれを取り出してみても、青年は不思議そうにそれを見るだけである。今までの飼い主は、これを使ってはこなかったのだろう。

「これを、ここに挿れるんだよ」

手にしたステンレス製の細い棒で、青年の性器の先端を示す。
青年は一瞬不安そうな顔をして、アドルフの手を握った。

「不安がることはない。見てごらん、この棒も、先端が丸みを帯びているだろう? 尿道を傷つけることはないから、安心しなさい」

その説明で青年が安心するとは思ってはいない。
青年としては、尿道とは排出する出口であって、挿入口ではないと思っている。
はたしてそんな場所に、この棒が入るのだろうか。
見れば見るほど、太く感じてしまうその棒を直視できず、しかし目をそらしていてはもっと恐ろしいと、青年の視線は泳いでしまう。
けれど性器の方は相変わらずの硬度だ。不安ではあるが、興味はあるのだろう。
アドルフは青年にもっと近づき、耳元であやしながら、尿道へゆっくりと棒を挿入していった。
少しずつ角度を変えて、波打つような形状のそれを沈めていく。
青年は初めての感覚に、ぎゅっとアドルフの腕を掴んだ。

「痛くはないかい?」

アドルフは慣れてはいるが、初めて経験した青年がどうなのか、一応心配してやるそぶりをした。
とろんとした目で首を横に振る青年の反応に満足し、アドルフは棒をどんどん奥へと挿入していく。
外に露出する部分が数センチになって止め、少しだけ引っ張りだす。
すると、青年は腰をびくんと浮かせて悦んだ。

「気持ちいいだろう」

青年の返事は聞かず、アドルフは棒を抜き差しさせた。
その度に青年の腰は揺れて、嬌声が上がる。
未体験の快感に、青年は大きく目を見開いて、口をぱくぱくさせた。
今にも達しそうなダイレクトな快感。
けれど、じくじくとした熱が腰に集まるだけで、射精寸前ではなかった。
物理的に尿道に蓋をされているからだろうか?
青年には理解の追いつかない事態に、ますますアドルフの腕を強く握る。

「気に入ってくれてよかったよ」

満足げにほほ笑むアドルフは、最後の仕上げとばかりに、奥深くまで挿し込んでいた棒を一気に引き抜いた。
青年は大きく体を震わせ、射精を覚悟した。
だが、強烈な快感が体を突き抜けるだけで、実際には精液は飛び出してはいない。
大きく波打つような、いまだかつて経験したことのない快感に、ベッドへ倒れこんだ青年は、なぜとアドルフを見上げた。

「秘密だよ。君をもっと気持ちよくさせてあげたかっただけさ」

青年の小刻みに震える体を、そっと撫でるアドルフの手の平から、また新しい快感が伝わる。
アドルフは青年の額にキスを落とすと、再び覆いかぶさった。




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