部誌1 | ナノ


スイーツ



 餅といえば何を思い浮かべるだろうか。丸餅切り餅鏡餅、はたまた雑煮かもしれない。大根おろしやきな粉、砂糖醤油で食べる人もいるだろう。

 もちが食べたい、と彼女が数日前からこぼしていたので、軽い気持ちであるよ、と答えた。
なのにこれほどがっかりされるとは。日本生まれ日本育ち先祖代々日本人(たぶん)の私と帰国子女の彼女、価値観が食い違うことは今までもあった。しかし餅で、否たかが餅の話から、ちょっとした喧嘩にまで発展したことに我ながら驚く。頭を冷やしに外へ出て正解だった。
 コンビニへ向かう。往復5分もかからない。いつもの便利な道程がなんとなく遠くなったように感じる。こんな日に限ってめぼしい雑誌はなく、立ち読みも出来ない。飲み物を眺めながら携帯でウェブを立ち上げる。『餅』を検索。代表的な食べ方、ちょい足し、郷土料理。私のイメージする餅だ。彼女はどんなものを期待していたのだろうか。だいたい餅を食べる習慣などあったのか?
 ふと思いつく。『モチ』で検索。ハワイでは、大福がローカルフードとして人気らしい。中身も小豆餡のみならずイチゴ・チョコレート・オレオクッキー&クリームなど様々ある。これか。彼女が食べたがっていたのは餅ではなくモチだったのだ。解るかそんなもん。だがもしも彼女の求める『もち』がこれならば、有名なアレで代用できるかもしれない。薄い餅に包まれたあのアイス。ある意味ジャパニーズ・モスト・フェイマス・モチ。
 買って帰ろう。そしてさっくり謝ってしまえばいい。来年はハワイにモチを食べに行こうね、と言うのだ。パイナップルブルーベリーチーズケーキにスイートポテト、きっと彼女は次々と試すことだろう。私はそれを笑いながら見る。いつものように。
「ただいま」




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テーマ「人外ファンタジー」
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