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少なからず後悔はしていた。

あの時俺がもっと強く引き止めていれば、あるいは。


しかし言いたい放題言って勝手に姿を消したのはアイツだ。俺に非があるとは思えないのも事実で。

それじゃあまるで意地の張り合いだと近藤さんには笑われたが、どうにもままならない。素直な気持ちを伝えるには、幾何か心がひねくれてしまったのだ。


総悟が真選組を出てから十五日が経とうとしている。あれから一度も、俺は総悟と言葉を交わしたことはなかった。



「――なァ、トシ」

「またその話か、近藤さん」

「だってなァ、いい加減様子だけでも見に行ったらどうだ?総悟だってきっと、トシに会いたがってる」

「知るかよ、あんなヤツ」

「まったく……。ならせめて、総悟がどこにいるか教えてくれ。俺だけでも会いに行くぞ」

「近藤さん、それじゃァ駄目だ。甘やかすなよ。こういうのはアイツからきちんと説明しに来るべきだろ」



俺が眉間にぐっと皺を寄せれば、瞬時に、近藤さんは顔をくしゃくしゃに歪めた。


近藤さんは今すぐにでも会いに行きたいのだろう。心配で仕方無いに違いない。それこそ目に入れても痛くないと言うほど、彼は総悟を可愛がっていたのだ。きっともっと前に飛び出したかったのだろうが、俺が良しとしなかった。

しかしこんなにも長期の不在は始めてだった。正直、暫くすれば帰るだろうと高を括っていたため、俺自身驚いている。


嗚呼、――俺も大概人のことは言えないのかもしれない。本当は総悟に会いたい気持ちは強くて、しかし何の意地か、どうすることもできずにいる。



「……クソ…ッ」



吐き捨てて、ズボンのポケットに手を入れると、紙切れのような物に触れた。俺にはそれが何だか分かってしまい更に苛立ちながら、ポケットの中でぐしゃりとそれを力の限り握り潰した。

それと同時に、俺の斜め後ろに控えていた山崎がおずおずと口を開いて。



「でも副長、沖田さんは真選組を抜けたんでしょう?もう、戻って来ないんじゃ……」

「俺は、総悟の脱隊を許してねェ」



俺がそう強く返すと、手前で近藤さんが豪快に笑い出した。バツが悪くて唇をへの字に曲げれば、山崎も微かに笑っていたので、殴り飛ばしてやった。


そうだ――、今の総悟はさながら家出少年なのだ。必ず帰って来ると信じて疑わない。



「総悟、早く戻って来るといいなぁ。迷子になってるのかもしれねェなぁ」

「それなら沖田さんに、家は此処だって教えてあげなきゃ」



俺は俯き加減に、あァ、そうだな、と小さな声で呟いた。



「総悟はおバカさんだからなァ。全く、困ったもんだ」

「沖田さんも局長には言われたくないと思いますよ」

「てめェにもな、山崎」



けらけらと笑う彼等を見てから、視線をさ迷わせた。外はまだまだ雪が降り続いているようだ。



「俺達が教えてやんねーと、導いてやんねーと、わかんねェんだよ、アイツは」



近藤さんのその言葉がやけに胸に染み込んで、無意識の内に反芻していた。彼等の視線が自然と俺に集まる。俺はほう、と煙草の煙を吐き出すとゆっくりと重い腰を上げ――



「行ってくる」



一言だけ、後に残した。






》to be continued..



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