突然の事に戸惑う私、その頬を彼の指が撫でた。
「不安にさせちまって悪かった…」
「銀時、」
「だけどお前はお前が思う程、つまらねェ女じゃねー。じゃなきゃ俺が周りの野郎蹴散らしてまで、お前を攫う筈がねェ」
――俺を、信じろよ。
「俺はいつだって、有利しか見えてねー。他の誰でも無い、お前の事が好きなんだよ」
真剣だった、とても。
あのお調子者の姿はひっそりと影を潜め、余りにも真面目で余りにも格好良い彼にそう言われてしまっては、ただ見惚れる事しか出来ない。
惚れた弱味だ。
私は顔を真っ赤に火照らせコクリと小さく頷いた。
彼の指にもきっとこの熱が伝わってしまっている。
「ごめん、疑ったりして」
「謝んなよ」
「ううん。大好きな人疑うなんて…私が最低だったの」
銀時を、見ず知らずの女に奪われてしまうのが怖かった。
見ず知らずの女と仲むつまじくしているのが許せなかった。
しかしそれらは全て銀時への愛故で、私がそれ程までに彼を想っている、その事実だけは分かっていて欲しかった。
ごめんね、ありがとう。
俯いたまま私は何度も繰り返し告げた。
真っ直ぐな彼の瞳を、今は見てはいけないような気がして。
「いや、勘違いされるような事した俺の方が悪ィし。何より、…有利も嫉妬してくれんだなァって嬉しかったりするし」
「し、嫉妬……!?」
「だろ?」
ニヤリと意地悪く笑った銀時は、茶化すように私の耳元に唇を寄せて。
銀さんのこと、嫉妬するくらい好きなんでしょ?と、誘うような声で囁いた。
「そ、そうだけど……あっ、じゃあさっき言ったあの女の人は誰だったの?呉服屋の近くで話してた、」
「あー、あれは――」
どうにもこうにも、銀時が話していたのは只の呉服屋の店員だそうで。
着物選びにかなり悩んでいた銀時を見かねて、話し掛けてくれたのだとか。
しかもそれは私へのプレゼントに選んでいて、先程電話に出た時はもう既に私の家の近くまで来ていたのだと言う。
通りで、電話してから数分もしない内に訪ねて来たのか。
「何かァ、店員がどんな彼女なんですか?とか聞いてくるから、銀さんそりゃもう有利について語りまくったんだよね。そしたら凄く好きなんですね、とか言われてさ」
銀時は完全に得意顔をしていた。
嬉しそうに話す表情から、その時の情景を私でも容易に想像することが出来て。
私は可笑しくて、思わずぷっと吹き出してしまった。
「何が可笑しーんだよ」
「だって、銀時。それ、私がどんな人間かじゃなくて、私のサイズとか好きな色合いとか…そう言うのを聞いてたんだよ」
「はっ?マジで…!?」
驚いた素振りを見せ、格好悪ィとうなだれる銀時。
そんな彼に凄く嬉しいし、格好良いよと笑ったのは私だった。
(悪ィ、やっぱ脱いで。)
(え?今からこれ着て初詣行くって言ったじゃん)
(いや、……やっぱ着物は銀さんの前でだけって事で、ね?)
((馬鹿。んな可愛いお前、他の奴らに見せられっかよ))
絡まり合う赤い糸
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