それからどれだけそうしていただろうか。
一向に泣き止まない私を銀時は黙って抱き締めて、温もりで包み込んでくれていた。
時折髪を撫でるから、その優しさにまた涙が込み上げて来てしまって。
ねえ、私はいつからこんなに泣き虫になってしまったのか。
嗚呼、反吐が出る。
昔は何があろうと、人前で涙など見せた事はなかったと云うのに。
その答えは恐らく、否確実に、銀時を好きになってからだと自分でも分かっていた。
恋愛は綺麗なものでは決して無いのだと、情けない程に痛感する。
痛くて、辛くて、切なくて。
でもどうやったって嫌いになれなくて、忘れられなくて、愛おしくて。
「もう、大丈夫」
私は鼻をすすってから、銀時にそう告げた。
彼の胸板をしっかりと両の掌で押し返し、ありがとうと力無く笑い掛けた。
「あのね、聞きたかったことあるって言ったでしょ?」
「あァ…、電話の話か」
「うん。銀時はさ、」
一呼吸置いて歯を食いしばり、それから出来る限り柔らかくなるように、私は精一杯の笑顔を彼に向けた。
「本当に、私が好きなの?」
二人の間の、微妙な距離。
唖然とした彼の表情。
何かを確かめるかのように伸ばされた右手は、私に触れる直前でダラリと落ちた。
何を言っているんだ、お前は。
銀時の唇は動かないまま、きっとそう語っていた。
何て表情をするんだ、貴方は。
何故だか分からないまま、私は呆然と立ち尽くした。
「あの時確かに言った筈だろ…、有利を愛してるって。それが嘘だって、お前は言うのかよ」
「違…っ、不安なのっ」
「不安……?」
「そうだよ!銀時はっ、格好良いし、いざという時は男らしいし、仲間想いで優しいし…」
叫んでいる内に、自分でどんどん悲しくなってしまった。
私には無い物をいっぱい持っている銀時は、初めから私とは釣り合わなかったのかもしれない。
今まで銀時が余り寄せ付けようとしていなかっただけで、彼は本当にモテるのだから。
私以上に綺麗で可愛い人など腐る程いるだろう。
「今日だって、モデルさんみたいな綺麗な人と笑っ、」
「くそっ、もう喋んな…」
私の言葉は遮られた、彼の声と唇によって。
何度も何度も角度を変えて、まるで奪うようなキスをしていく。
熱くて、融けてしまいそうだった。
苦しそうに息を荒げる私を見て、これまた苦しそうな瞳をした彼は私を抱き寄せた。
掠れた声で愛を叫んだ
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