「くっしゅん!」 「なに、風邪引いてる?」 「…んー分かんないけど、」 盛大なくしゃみをした私に、今日の風は今年一番の冷たさだとスパナは教えてくれた。 どうりで、と笑えば、大丈夫?と心配してくれる優しい彼。 「家、戻る?」 「折角のデートなのに、ごめんね」 「いいよ。家でもデートなんて出来るし、ウチは姫といれればそれでいいから」 スパナはいつも通りのポーカーフェイスだったけれど、本当にそう思ってくれている事だけは、繋がれた手から伝わった。 だから私も安心して彼の言葉に甘え、火照った身体でもと来た道を帰ることにして。 家に戻ると、私はすぐさまベッドに寝かされた。 離れてしまった温もりが何だか恋しくて、私は暫く微熱の残った掌を見詰め続ける。 刹那、どうしてだろうか、スパナの後ろ姿に抱き付きたい衝動に駆られてしまい。 ああそうだった、と。 「今日は、クリスマスだったんだっけ…」 しかし私はと言うと、何一つ彼女らしい事も出来ず、寒さにダウンしてしまっている訳で。 そうしてそのまま一人で悶々と唸っていると、氷枕を作っていたスパナが丁度私を振り返り、笑った。 「ウチにも何かしてくれるの?こういうのクリスマスプレゼント、って言うんでしょ」 「えっと……スパナは何か欲しいもの、ある?」 「んー、欲しいものならいっぱいあるけど」 ――でも一番は、やっぱり姫かな。 スパナは歯で飴を噛み砕く。 持っていた氷枕を机上に放置したかと思えば、その手をそのまま私へと伸ばして来て。 後頭部は支えられ、迫り来る唇は私のそれと柔らかく重なり合った。 触れるだけのキスは次第に、濃厚なキスへと変貌して行く。 絡まり合う熱と掛かる吐息に身体がじん、と痺れた。 「ウチ……姫が欲しい、」 「ス、パナ…」 とろんと落ちた双眼に見詰められ、私は彼の名前を呼ぶ事しかできなかった。 甘く深い口付けに酔いしれたから、正常に脳内が機能していないのだ。 パジャマの釦がひとつ、またひとつと外されていく。 キャミソールは身に着けていなかったから、薄ピンク色の下着がそのまま露わになった。 「ん、ぁ……」 ここにも、ここにも、と。 麻痺した身体にちゅう、と音を立てて吸い付かれる。 スパナは首筋から腹部にかけて順々に紅い華を散らして行った。 白い肌に咲いた紅を見て、満足そうに口元を弛ませる彼。 思わずその顔に見惚れてしまっていると、今度は素早い手付きで下着を上に押し上げられて。 そしてそのまま、スパナは熟れた突起に噛み付いた。 「きゃ、…っぁいや」 「姫のここ、赤くて綺麗だよね」 「ふぁ、スパナっ、そこで喋っちゃ嫌……!」 「なるほど。胸でも感じちゃうみたい?」 厭らしい笑みを零してスパナは私の突起に息を吹きかける。 そしてぷくう、と一層膨らみ上がったそこをコロコロと口内で転がし始めた。 もう一方の胸はスパナの手によって揉みしだかれていて、器用にどちらの胸も弄ばれる。 それだけで気持ち良くて、どうしても感じてしまって、私は小さく喘ぎ声を漏らしてしまう。 「ねえ。ウチも姫も、身体熱くなっちゃったね」 「……う、ん?」 「もう風邪っぽかったのも、分かんないくらいでしょ」 ちゅう、再び噛み付いたスパナの身体に手を回して、私はそうだねと微笑んだ。 もしかしたら明日は二人して風邪を引いているかもしれない。 しかしそうなったら嬉しいと思う自分がいて。 だって、今この熱をスパナと二人で共有している――、 その何よりもの幸せが証明されるのだから。 この熱は消えぬまま←back |