過去の約束





最近のリボーンは、昔に比べて忙しいのだろう。

一緒にいる時間が、めっきり減ってしまった。

昨日も今日も仕事だと言って、結局顔を合わせてすらいない。

きっと再び聞いたところで、明日も仕事だと答えるに違いない。

リボーンは寂しくはないのだろうか、私は寂しくて仕方無いというのに……。



「姫ちゃーんっ!!」

「あっ、ツナさん!どうしたんですか?」



大勢仲間がいる、ボンゴレの基地。

いつも賑やかで毎日が楽しいが、朝は騒々しくて仕様が無い。



「今日もリボーン、帰り遅いって」



しかし、彼だけがいない。

皆には気付かれまいとしても、心の奥では寂しがっている自分がいる。



「そう…ですか。」



別に、恋人同士って訳でも何でもないのだけれど――。


でも、何でだろう。

いつからだっただろう。

こんな気持ち、いつから持ってしまっていたのだろう……?



皆が寝静まった夜。

姫は、リボーンが帰ってくるのを待っていた。

ガタリ、と物音がすれば、



「おかえり!」



黒いスーツに黒い帽子、肩にレオンを乗せた、彼の姿。

十年前と何一つ変わっていないのが、どうにも可笑しくて笑える。



「珍しいな、姫が起きてるなんて」

「待ってたの。リボーンと話したくて…」

「俺に、話?」



そう、あの日、あの約束が全てだと思うから。

きっと、あの日の君を、私は好きになったんだ。



「ねえ、リボーン。…覚えてる?たった1度だけ、私にしてくれた約束」



俯きがちに、姫は言った。

リボーンは窓から身を乗り出して、星を眺めている。



「ああ、覚えてるぞ」



星がきらりと瞬いた、確かあの夜もこんな星空の下だったと思う。


コルト、死ぬんじゃねえぞ――?

何かあったら、この俺が守ってやってもいいぜ――。


あれは戦場だったか。

リボーンは固い約束を結び、私を護ることを誓ってくれた。



「よかった、覚えててくれたんだね」



私が好きな君は、まだ君の中にいて……。

ただそれだけだけれど、心は嬉しくなった。



「私、リボーンのこと…まだ好きでいていいんだよね?」



ふと、言葉を漏らす。

リボーンは視線をずらし姫を見た。


――あれ?リボーンの驚いた顔、初めて見た。

星は当たり前のように輝き続け、二人を照らした。

夜風が、その間をすうっと吹き抜ける。



「…いいに、決まってるぞ」

「そう?なら良かった」

「なぁ、姫、」

「なーに?」



リボーンは口許を緩め、にいっと綺麗な歯を並べて。

私に優しく手を差し伸べる。



「――俺も、姫のこと、好きでいていいか?」



刹那、夜には似つかわしい暖かな風が、そっと二人を包み込んだ。






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