dear.





ひらりひらり、落ち葉が散って。

ふわりふわり、雪が舞い降りた。



夕暮れ時の帰り道。

冬は人通りも減って、冷たい風が直に吹き込んだ。

寒いなあ…とそう呟き、身震いをしてから私は隣に居る彼を見る。



「………アレン、」



何処か遠くを見詰めている、そんな瞳。

何を見詰めているか何て分かる訳もないけれど、冬の始まりに近付くに連れて、アレンはぼうっとすることが多くなった。


──でもきっと、考えているのはマナのこと。


そして私にしてあげられることは、悲しい程に何も無くて。



「アレン、寒くない?」

「大丈夫ですよ。僕よりも姫の方が薄着じゃないですか」

「わ、私も大丈夫だから…!」

「駄目ですよ、温かくしてないと。姫が風邪を引いたら、僕が寂しいですからね」



アレンは本当に寂しそうな笑みを浮かべると、自分の羽織っていたコートを私に掛けてくれた。

アレンは?と問うても、僕は大丈夫だと言うばかり。

そうやって、気にするのはいつも他人のこと――。


アレンの優しい所が好きだった、……だけど願うならば分けて欲しかった。

私にも、その重荷を、その悩みを、その苦しみを。


私は目を伏せると、彼の掛けてくれたコートに身を寄せた。



「ありがと…。あったかいよ」

「それは良かった、」

「でも、これでアレンが風邪引いたら今度は私が寂しいでしょ?だから…」



そう言いながら、アレンの左手を取って自分の右ポケットに入れた。

そしてその上から掌で包み込むと、少しだけはにかんで。



「これで二人とも温かいね」



右ポケットに押し込められた、二人のぬくもり。

それは温かく繋がって、心までポカポカに溶かして行くようで──。


アレンが独りで耐えようとするならば、私がずっと、隣に居る。

その重荷を分けてくれるまで、ずっとずっと隣で手を握っているから。




「アレン!帰ろっか!」




笑って、欲しいの。

上辺なんかじゃない、心からの笑顔を望んでいたい。


はい、とアレンは微笑んだ。

しかしやけに視界のぼやけた私の瞳には、どことなく寂しさを携えているように感じさせる。

雪で曇った視界のせいだろうか。

目元をぐいっと拭うと心の中で呟いた、……ごめんね、と。

貴方の為に何かしたくて、だけど何も出来ない自分がどうしようもなくもどかしかった――。



(何時の日か、貴方が心の底から笑える日が来ますように、)






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