君の泪に誓った





──愛してる、──


貴方からその言葉を最後に聞いたのは、何時だっただろう。

鳴り響く着信音、その度に期待する貴方からの電話。

毎晩握り締めながら眠りに就くから、薄桃色の携帯は次第に色褪せていった。


まるで、二人の距離を示唆するかのように。



「会いたいよ、晋助」

何処にいて、何をしてるの?

「話したい…っ…」

声を聞きたい、キスをしたい。



溢れ出す想いが止まらなくて、誰もいない部屋で一人、声をあげて涙した。

嗚咽と共に吸い込む酸素に、余計息苦しくなる。


──ガタリ、
音をたてた窓ガラス。


晋、助……?

私は淡い期待を抱きながら、そっとシルクのカーテンに手を掛けた。

瞬間、嗅ぎ慣れた香が私の鼻を擽って。



「晋、…っ…あ、銀さん」

「何なんですかコノヤロー。人の顔見た瞬間に幻滅しやがって」

「ははっごめん。こんな夜中に、それも窓から、どうかしたの?」

「……姫さ、銀さんの職業は?」

「え?よ、万事屋、でしょ」

「せーかい。んじゃ、姫のお捜しモノは何でしょーか」



その問いと共に、銀さんはにいっとガキ大将のような笑みを浮かべた。

と同時に、窓枠に手をついていた私は部屋の床へと押し戻されて。

…否、押し倒されて。



「んじゃ、ごゆっくり〜!」



再びガタリ、と音をたてて窓ガラスは閉じた。

一人きりだった筈の部屋に、私と私以外の"誰か"を残して。

そして私の大きく見開かれた目は、眼前に確かに存在している彼を捉えた。



「姫…っ、悪かったなァ」

「晋助っ!??…晋助…!会いたかった、凄く凄く、会いたかったよ…っ」

「あァ」


──もう少し、このままでいさせてくれ。



久し振りの口付けは、少しだけしょっぱい涙の味がした。

ずっとずっと待ち望んでいたキスに、余計涙が溢れ出したせい、だろうか。


幕府から一人で逃げ回っていた晋助の身体は疲れ切っていて。

しかし私を抱く腕の力は、キリリ、と強さを増していた。



「ねぇ、晋助……私も一緒に連れて行って」

「……追われる覚悟は?」

「勿論、晋助となら!」



満面の笑みを浮かべる私に、クク…と喉を鳴らして笑う晋助。

そして満天の星の下、色褪せた筈の携帯は薄く桃色に反射していた。


季節外れのサンタクロースは、とんでもない最高のプレゼントを用意してくれました──。





(姫、俺に一つだけ約束させろ)
(えー?なによ改まって?)

((悲し涙はもう流させねェ))






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