愛があなたを変えた今日は久し振りのデート、の筈だった。だけど肝心の銀ちゃんが中々来なくて。 私は暇だったから、馴染みのある沖田さんにメールを送っていた。沖田さんに銀ちゃんの自慢ばかりをしていたら、いつの間にかメールに夢中になっていた私。 近付く足音にも気が付かぬまま――。 「何、やってんの?」 「あ、銀ちゃん!おそ、」 「何やってんだ、って聞いてんの」 「え……?」 いつもと様子の違う銀ちゃんに、私は戸惑う。私は素直に口を開くと、沖田さんにメールを…と言った。すると銀ちゃんの顔がみるみる変わっていって。 「へー、沖田君とやけに楽しそうにメールすんだな」 「ち、が…!」 「俺はお前を探してたのに?」 その言葉にハッとする。どうやら私は待ち合わせ場所を間違えていたようだった。しかしごめんと謝ろうとした、その刹那。 グシャ、という鈍い音と共に、私の携帯は地面に押し潰されて。叩かれたその手は、赤く、ヒリヒリと痛んだ。 「愛してる」 なぁ、姫。 「俺と連絡するだけなら、携帯なんていらねーだろ?」 何時だって、会いに来ればいい。 赤く腫れた私の手を取り、叩いたその手で今度は優しく包み込んだ。そして幾度となく口付けて、赤い手を朱の印で染め上げる。 「銀ちゃん……?ねぇ、どうしちゃったの?」 「姫が側にいねェからだよ」 「そっ、か……、ごめん」 俯く私に、壊れた携帯の底から丁寧にプリクラを剥がして手渡す。そんな所まで知っていたんだ、と私は小さく微笑んだ。 ((大き過ぎる彼の愛を、)) (それでも受け入れてみせる) (小さ過ぎる此の掌で、私が) ←back |