純粋少女!





在り来たりなデートコース。

行き当たりばったりな君の笑顔。

そしてお決まりの――…



「銀ちゃん、銀ちゃん!楽しいねっ」



隣にいる俺の恋人は、遊園地デートだとか言って張り切って。いつもは履かない高めのヒールに、ふわりとしたワンピース。

……はっきり言おう、可愛くて可愛くて仕方無い。



「姫ー。銀さんさ、疲れたんだけど…」


どっかで休まねェ?



と、これは単なる口実で。他の奴らに姫を見せたくなかった。

いいよ、と笑顔を振り撒き、くるりとターンをする彼女。その度に、ワンピースの裾がひらひらと揺れた。



「どこで休むの?」

「んー、観覧車とか?」



大きな観覧車を指差し、俺は姫の背中を一押しした。途端に、彼女の耳が真っ赤になって。それは後ろからでもよく分かった。

あ、何か新鮮な反応…?

高鳴りし始めた胸の鼓動に、酸素を名一杯送り込む。そういえば観覧車と言えば、ロマンチックにキスとかするのか?



「か、観覧車じゃなくてさ」

「例えば?」

「カフェ、とか…」

「遊園地の意味ねーじゃんか」



うぅ、と口ごもり、姫は視線を泳がせる。それは幾度となく観覧車に目を向けられていて。明らかに意識している、それは一目瞭然だった。

ああ、可愛い、可愛い。

俺はそんな姫の後ろ姿を見て、少しだけ頬が火照った。


待った、と繰り返し叫ぶ姫を他所に、観覧車へと乗り込む。ごゆっくり、と声がして、扉は固く閉ざされた。

俺の前に座った彼女は俯きがちだ。景色も見ずに、そわそわそわそわ…。



「姫はさァ、そんなにしたくないわけ?」


俺と、キス。


「…っ!そんなことっ」



少し不機嫌そうな顔をして、俺は彼女を見つめる。思わず目が合ったその瞬間、姫の顔は真っ赤に染まり上がった。

だが、今度は反らすこともなく。俺の目を見て小さく呟いた、その言葉。



「初めて、だから……」

男の人と、キス、するの…。



潤んだ瞳に火照る頬、上目がちの彼女の視線に、俺はノックアウト寸前!ああ、心臓爆発。胸の鼓動が、煩いほどに響いて。

それを隠したくて、抱き締めた。姫の華奢な身体を俺の肩が容易に包み込む。そして、耳元で囁くと同時に――、


甘い甘い、リップオン。

お決まりの密室空間に、ふたり、閉じ込められて。






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