ウェスタンな日常





ちゅるるる、どどーん!

けたたましく響く、爆音と爆風。

ここは戦場ですか?…と問うのが、恐らく正常な人間だろう。だが勿論、ここにそんな人間がいる筈も無く。そしてこの殺伐とした風景が、日常茶飯事で。



「死ねーィ、土方ァァ!」

「生きるし、俺ェェ!」



そう、此処は何を隠そう、真選組の屯所である。江戸の治安を守るのが、私たちの務め。



「……ですよね、きっと」



うん、きっとそう。こんな街のど真ん中でミサイルの音が聞こえるなんて……有り得ない有り得ない!というか、有って欲しくないんですけど。



「姫は俺のもんでィ!!」

「んな訳あるか、死ねェ!」


──ずっどーん!


「鼻毛引き抜き過ぎて、大量出血しろィ!」

「ゴルァ!マヨネーズで窒息死してーのかァ」


──ばばーん!



やはりそれは、幻聴でも幻覚でもないようで。私は余りの大音量に耳鳴りがした。

あーこんのクソ上司……。勝手に人の名前出すとか、本気で止めて欲しい。

はあ、私は大きく息を吐き出した。こういう日に限って、近藤さんは必ず居なかったりするのだ。



「今日という今日は、決着つけまさァ」

「あァ、望むところだ」


副長の座と姫の隣を掛けて……!


「いざ、勝負っ!」



ちょっと!何勝手に人のダーリン決めようとしてんだ、こいつら!

爆音が止み、爆風によって木の葉が宙を舞った。そう、それはウェスタンの早打ちガンマンの如く。……背景はただの池周りだけどね。



「次の鐘が鳴った瞬間…、それが土方の終わりでさァ」

「ふっ、俺に勝てるとでも?」



──3、2…



何だかそれらしくなって来た雰囲気に、私はごくりと唾を飲んだ。そもそも鐘があったかは疑問だが。



──1…


ポチャン!



カウントと共に鳴り響いたのは、鐘の音……?いやいや、鯉の跳ねる音だから。

そして二人は一斉に振り向き、銃口を相手に向けた。……だといいけどね、二人は一斉に飛び掛かって行った。


ひゅるりと風が吹き付け、もう一度木の葉が舞った。それは私の手のひらに平たく落ちて。まあ、何だかんだで、この日常が一番楽しかったりするのだ。




(土方死ねェェェ!)

(総悟、おまっまじ死ねよ!)


(……ってか、2人とも逝けば?)






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