男のプライド





暗い部屋に灯りは一つ。げほごほと咳き込む声と同時に、襖は開いた。



「万斉、武市先輩からお薬貰って来たよ?」

「ああ、姫。悪いでござる」



姫は拙者の前に座り込むと、優しく布団から抱き起こした。口に含まれる粉薬から、異様な匂いが放たれて。思わず顔をしかめる。

それと同時に気が付いた、身の異変。



「ば、万斉!?」

「……身体が、縮んでるでござる」



慌てふためく彼女。そしてその後ろから笑い声がして。隻眼に見つめられ、万斉は晋助、と呟いた。



「面白ェじゃねーか、人斬り万斉がお子様サイズとはなァ」

「晋助様!や、やめて下さい」

「クククッ、何だァ姫?」

「万斉は今、風邪引いてるんですからっ」



拙者を笑い、つまみ上げる晋助に、姫は必死で応戦していた。彼女に庇われるのは素直に嬉しい。何とも可愛らしい姿だ。がしかし、どうにも府に落ち無かった。


それから数時間。

月が見えなくなり、辺りも本格的に暗闇に陥った頃。

いつの間にやら、元の大きさまで戻りきった自分の身体を見つめ、万斉は少しだけ笑みを漏らした。自分が飲ませた薬だったから責任を負っていたのか、それとも本当に心配していたのかは定かでは無いが、姫もほっと胸を撫で下ろしていて。



「……やはり庇われるのは性に合わないでござる」

「、え?」



先程から感じていた不快感を吐き出すべく、治りたての身体で万斉は姫を抱き締めた。

ふぁ、と息を漏らすその唇に、自分の唇を重ね合わせると、それを深く濃厚なキスへと導いていく。離す口に繋がった銀色の糸。それを指で絡めとると、万斉は姫に微笑んで。



「あァ。拙者は姫に庇われていて欲しいのかもしれぬな」



もう一度、落とす唇。幾度となく、銀色の糸を結びつけ。


二人を繋げる白銀の糸。

好きな人には何時だって、守られていて欲しいのだ。






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