今日も夢裏で貴方は嗤う





雨に打たれて──、

洗い流す、何もかも。


土も緑も涙も鮮血も、何もかもを流しきって。そうして残ったものは何だったのか。

私はきっと、護るべき大事なモノまで雨に流してしまったんだ。この両手一杯に抱えられるだけの小さな、それでも大きな何かまで、失って、しまったんだ。



「泣くなよ」

「泣いてなんかない…っ!」

「ばーか、泣いてんじゃねーか」

「…泣いて、ないもん……っ」



私は雨天を見上げて、唇を噛み締めた。ボロボロと地面に零れ落ちるそれは、雨なんだと言い聞かせて。



「強がんじゃねーよ、」

「だって…銀時が……」

「あ?」



──銀時が、泣いてないから。


そう告げようとして躊躇った唇をへの字に曲げながら、私は俯いた。小刻みに震える肩を、今にも溢れんばかりの嗚咽を、ただひたすらに圧し殺して、銀時のためだけに笑う。



「上等な顔、出来んじゃねーか」

「…っ…駄、目…!」

「今度は何だってんだコノヤロー」

「……もう、喋らないで」



ごめんね、お願いだから。そう言って銀時の手を握り締める私を見上げ、彼は笑った。心配性、と。俺は大丈夫だぜ?なんて、まだ温かい掌を平つかせるけれど。



「強がりはどっちよ」



銀時の呼吸は確実に荒くなっていた。尋常じゃない出血の量に視界も霞んで来たのか、視線がゆらゆらと揺れ動く。

ぼんやりとして来た彼の瞳。その瞼に私が口付けると、安心したかのように閉じてしまって。



「…銀、とき……?」


銀時銀時銀時銀時ィィ…っ!!!



──何度だって名前を呼んで。


慌てたように銀時の唇にキスを落とす。しかしどれだけ唇を重ね合わせたところで、彼が目を開く事は無かった。

まだほんのりと残った温もりはあるのに、瞳は閉じたままで。生きているのか死んでいるのかさえも、私には分からなかった……。




(ねえ、銀時――。)


私の夢の中で貴方は泣くの。

(いつだって隠し続けた、)

その感情を、

(今になってさらけ出して。)


馬鹿みたいに、


(「お前が好き」だなんて、さ)







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