儚き朱色狂い咲き





滲む滲む、血が滲む。


生半可な覚悟なんて持ち合わせてなどいなかった。何時だって本気で、本気で貴方を愛していたのに。愛される覚悟を決めて来たのに。



「ね、ぇ…どう、して……?」

「てめェを愛しているからだ」

「っ嘘、よ…!なら、」



開きかけた口をつぐんで、私は息を懸命に吐き出した。どうしてこんな事するの、そう言いたかったが、喉元が震えて声にならない。

荒れる呼吸。身体は酸素を欲しているのに、潰された喉はスースーと厭な音をたてるだけ。



「愛してんだァ」


どうしようもなく、な。


「姫の困った顔、好きだぜ」


誰にも見せたくなんて無い。


「今からてめェは、…俺だけのモンだ」



嬉しい筈の愛の言葉。しかし瞳から落ちるは大粒の涙だけで。


ザクリッ…ザシュ、シュッ──。


放り投げられた四肢。肉の斬られる音。痛い、などという意思は消え失せて、私はもう眺める事しか出来なかった。


生臭い、血の匂いが鼻をつく。


私の足元に赤黒い血溜まりが出来て行く。ぬるりとした血の感触、その生暖かさは憎くも気持ち良かった。身体から滴る、赤黒い大量の血を舐めとると、晋助は不敵に微笑んで。



「クク、やっぱり思った通りだァ」

「…っ…な、に……?」

「姫、てめェは赤が似合う」



滑り落ちた、刀。

最後の一太刀を浴びせた晋助は今度は彼氏としての優しい腕で、私を名一杯に抱き締めた。しかしそれを抱き締め返す腕は、私にはもう無くて。


温もりが、遠ざかる。


乾いた双眼に貴方を見た。散り逝く私に晋助が愛おしげに微笑むから、生きたいの一言を噛み殺す。

そして私は動かなくなった、半分瞳を開いたまま。それでも愛していたのだと、貴方をこの瞳に消え行く最期まで焼き写すと決めたから――。






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