深紅





会いたくて。

会いたくて。


どうしても、貴方に会いたくて、ただその一心で私は夜の街道を駆け抜けた。

転がるように駆ける私を凝視し、周囲の人々は不審な目で見るけれど。それでも構わず、私は全速力で走り抜ける。



「──し、晋助様…っ!!」



そうして辿り着いた先で私を出迎えたのは、愛しい彼の隻眼だった。鋭く冷たい瞳が私を捕らえる。

そんな晋助様の背後には鬼兵隊の隊員がずらりと並び、今にもこの地を離れようとしていた。



「…姫……。てめェ、どうして此処に…?」

「晋助様に会う為に決まってるじゃないですかッ!」

「あァ……そうだなァ」



喉が張り裂けんばかりに大声を張り上げる私を余所に、晋助様は至って冷静だ。そしてその視線は私から逸れ空へと向かった。

私に内緒で帰って来て、また、私に内緒で行ってしまう。今だって銀時が教えてくれなければ、彼に会う事さえ出来なかっただろう。



「で、どうかしたのかよ」

「あの、お願いです…っ、私も連れて行って下さい!晋助様のお側に居たいんです……!」

「ククッ。相変わらず物好きだな、てめェも」



晋助様はそう言うと、口角を密かに吊り上げて楽しそうに笑った。そして背を向け私に来い、と促して。私は名一杯微笑んでから、晋助様の元へと走り寄った。

一歩一歩近付く度に、彼への想いが込み上げる。会えない間にも積もっていった深い愛情、それが今心から溢れだそうとしていて。



「晋助様っ、会いた…──」

「まァ待てよ、姫」



私の声を遮ると、彼は身体の向きを変えた。周りに居た隊員達はいつの間にか居なくなっていて、ひっそりとしたこの場には私と晋助様の2人だけ。

私は思わず足を止め、交じり合う視線の先を見詰めた。


ゆっくりと伸ばされる腕に暖かな温もりを纏い、晋助様は私を柔らかく抱き締める。冷めた瞳の奥に覗く隠れた優しさ、私だけが知る温もり──。幾日も待ち望んだその身体に抱かれ、私は夢見心地に瞼を閉じた。



「俺に言わせろ」

「は、い」

「……会いたかったぜ、姫。会えなくなってからやっと、気付いちまったみてェだ」


──ククク…、俺も随分と遠回りをしたもんだなァ。


「俺ァお前を愛してる、……今からだって遅くはねえだろ?お前は、俺の女だ」



髪を撫でる、大好きな彼の指。

私を愛しそうに見詰めるその瞳に、私は深く頷きながら離れません、と確かな言葉を紡いだ。

その瞬間、顎をぐいっと引き上げられて。二つの影は一つに、一つの影は二つに。久方ぶりの口付けは甘くもほろ苦い、大人の味がした。





(赤く染まる頬、熱を帯びる唇)
(再び確かめた愛を、いま、)

((貴方と共有したいのです))






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