恋に未来に、





此の世界は不確定要素が幾重にも重なり合う、"未来"で包み込まれている。


だからね、──もしも。



「私が明日死ぬとしたら、銀ちゃんはどーする?」

「は?どうするって、…」

「いいから、答えて」



他愛ない会話で盛り上がった直後だった。

突然真剣な顔になって迫る私に、銀ちゃんはたじろぎ目を瞬かせる。


頭にハテナが沢山見えて、しかし一拍置いてから彼は口を開いた。

それも率直にサラリと言い切って。



「どうもしねーよ、俺より先に死なせるつもりねーから」

「…なら、明日私が遠くに行っちゃうとしたら?」

「その前にお前を思い切り愛して、それから抱き締める」



ほんとに?嬉しいな、そう言う私に益々首を傾げた銀ちゃん。

熱でもあるのか、と額に手を当ててから余計に眉をしかめた。


――だって私、元気だし。

銀ちゃんの大きな手を取って、私は自分の胸に当てがう。



「じゃあさ、明日地球が滅びるとしたらどうするー?」

「最期の最期まで姫と過ごして、…離さねーわきっと。滅びる前も滅びた後も、二人で一緒とか良くね?」

「ふふっ、銀ちゃんらしいや」


くすりと笑みを溢した私との距離を縮めると、銀ちゃんは少しだけ躊躇して。

斜め上から引き寄せるようにして口付けた。

くいっと顎を引き上げられ目線が合う。


其処には心底不安げな、彼の瞳。



「……なに、お前なんか病気なわけ?死ぬとか何だよ、」

「そんなわけないじゃん、もしもの話だよ?ほら、この雑誌にあってさ」

「何だコレ。はあ、紛らわしいでしょーが…!」



心配して損した、と銀ちゃんは緊張の糸が切れたようにぷつんとソファに崩れ落ちて、私は再び雑誌に視線を移した。


──もしも、の話。


どんな仮定を突き付けられても、真っ先に浮かぶのは貴方のこと。


銀ちゃんと生きる私が居る。

そう思える自分に出会えた、幸せ。



「ねぇ銀ちゃん、嫌って言われても離れる気ないけどいい?」

「馬鹿言ってんじゃねーよ。銀さんが離さないからね?」



余りに不確かな未来、──しかし其処には必ず銀ちゃんが居るとそう思う、そう信じる。

喩え世界が滅びようと喩え最後の二人になろうと、

(ただ互いを愛し続けたいと)

私達はそう、願い乞うの──。






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