掴んだ光は君だった





諦めろ、なんて誰が決めた?


望めば何か叶うはず、否きっと叶うのだと──其れだけを信じて。

淡い期待を膨らませる私を、誰かが愚かと呼ぶのだろう。



「土方さん、あのね。」



しん、と静まり返った部屋で声を出せば、反響する音が余りにも虚しくて。

あのね、私…少しだけ怖いんだ──、其れでも愛しい貴方へ向けて言葉を紡ぐ。

助けて!……伝わらないとは分かっているのに。




「…ん?あ、れ?…あーあー」

反響音がいつもと違う…?

「あーあー…やっぱり、そう」



徐に立ち上がると私は鉄格子へと歩み寄った。

刹那、ギギギと重い鉄板が軋み動き出す音がして。

私が天井を仰いだと同時に、黒い何かが降ってきた──。



「え、嘘……そんな、」

……土方、さん?

「あ?──…ッ、姫っ!てことは此処がビンゴって訳だな」



助けに来たぜ。


ばつの悪そうな顔をして頭をしきりと掻きながら、土方さんは手早く鍵を開けると私を抱き締めた。

ぎゅう、と抱き締めて離さないように…強く強く。



「浪士に捕まったって聞いた時は、俺の心臓止まんじゃねーかって……無事で、良かった」

「ひ、じかたさん……っ!」

──でもどうして?
此処に来れば貴方までもが、

「変なこと考えんなよ、姫?」



土方さんを巻き込むつもりなんて無かったのに。

そう言葉は紡ぐけれど、彼の温もりに触れ心地好かった。

一瞬にして震えも止まる、不思議な力。


私は回された腕にすがるように抱き付き返し、大好き、と声を漏らして──。



「ああ、俺もお前が大切だ…。だから助けに来たんだろうが」



ほら行くぞ、と差し出された片手を握った。

ゴツゴツとしていて、だけど私の掌を優しく包み込んでくれるそれ。

安心しろと云わんばかりに、彼は私の額にキスを落とすと──煌めく銀色の刀身を剥き出しにして。


お前は俺だけに護られていればいいのだと。


私を脇に抱き込むと、光目指して全速力で走り出す。



「つらく、ねェか?」

「ん、大丈夫…!」



はあはあと漏れる、彼の息遣いと私の息遣いが混じり合った。

そう、待ち望んだのは此の瞬間だったのだと──全ての時が愛おしく思えた、奇跡。






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