彼女はひまわり





「いたいた、ひっじかった先生ー!こっちで一緒に遊ぶアル」

「おい!離せよ!土方先生は俺と遊ぶんですぅ」

「あーはいはい、分かった。順番で遊ぶから待ってろ」

「ダぁああメぇええ!!土方先生は私だけの旦那ァァ…!!!」

「って!何やってんだ、姫!?」



此処は、今日も元気いっぱいな銀マヨ保育園。

先生が女ばかり、なせいか。

はたまた此の容姿、のせいか。

先生の中でもやけに俺が人気だったりする。


で、今俺に抱き付いて来たのが俺の嫁の姫……って何かコレ恥ずかしくねーか!??

一応、コイツも先生という立場な訳だが。



「みんなー!土方先生と遊びたい子はまず姫先生とジャンケンしようね?」

「「「はーいっ」」」

「勝ったらご褒美に土方先生レンタルしちゃう!それじゃあいくよージャンケン、…──」



当初は姫が抱き付いて来たせいで、女園児にマジ泣きされたような気もするが。

今では日常茶飯事で逆にチャカされて……はあ、俺の立場って一体。


大きく溜め息を吐いてから、大勢の子供達に囲まれる姫の姿を見やった。

輝く笑顔は今日も楽しそうに弾けている。

──何だかんだで一番慕われているのは、アイツなのかもしれない。



「なあなあ土方コノヤロー、姫先生に見惚れてんですかィ?」

「あ!??何言ってんだよッ」

「違うんならいいんです。でも鼻の下、のびてやすぜ」



コラっと一喝、いつものように悪餓鬼を叱ってやれば、風のように逃げ去って行く。

俺は再び姫を見ると、反射的に口元を押さえた。

べ、別にさっきの言葉を気にした訳じゃねーぞ!


頬が熱くなるのを堪えながら、ジャンケンの行方を遠巻きに見守っていた、──その刹那。



「きゃあ!」

「ふむ。今日のパンツはピンクにレースのリボンか……ぐはっ」

「てんめっ何してやがんだ、桂ぁあああああ!!!」

「やめっ、暴力は駄目でしょ?土方先生!」



見開かれた瞳孔に臆せず、俺の頭を小突く彼女。

やはり姫にだけは頭が上がらないのも事実で、これも惚れた弱みだ。

きゅ、っとスカートの裾を押さえながらキリリと俺を睨み付ける姫に、不覚にも欲情す……あー俺ァ変態か畜生。



「土方先生っ、土方マヨラー先生っ。鼻の下…やっぱりのびてまさァ」

「お前はうっるせェ!」


俺は姫に向き直ると、照れ隠しに最早日常茶飯事と化した抱擁をした。

……これ園長に見られたらまずくねーか。


途端、狡い狡いと言わんばかりに囲まれてしまい。

いつの間にか、周りを取り囲んでいた園児達にも抱き付かれ、俺と姫は引っ張り凧だ。

どちらからともなく顔を見合わせれば、あの輝かしい笑顔が俺に向けられていて。


──ああ毎日が楽し過ぎる。






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