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「銀ちゃん、」



咄嗟に呼んだ声は、微かに震えていた。



「……大丈夫。寒くなったらいつでもあっためてやるぜ?」

「えへへ、頼もしいな」

「何てったって銀さんはお前のヒーローだからね。姫が望むことなら何だってしてやろうじゃねーの」



銀ちゃんは、やさしい。

だから余計に、泣いては、いけない。こんなにも優しい彼を困らせては、駄目だから。


涙を閉じ込めて手のひらを軽く握った。瞬間、今度は目蓋が落ちて来て。途端に睡魔に襲われる。しかし私はそれを必死でとどめようとした。



「――眠いのか?」

「ちょっとだけ……。でも、寝ないよ」



少し躊躇いがちに言葉を紡ぐ。

眠たい、けれど眠れない。否、寝たくないのだ。理由はただひたすらに単純で、けれど理屈じゃなかった。私はただただ怖いのだ。銀ちゃんが居なくなってしまいそうで、怖かった。


―――けれど、



「俺は此処に居るから」



ふいに呟かれた。銀ちゃんにはきっと、見透かされていたのだろう。

何時だって、私が本当に欲しい言葉をくれる。それが切なくも嬉しかった。彼は超能力を持っているのかもしれない、なんて。それならそれは、私にだけのテレパシーに違いない。



「ちゃんと、お前の隣で、お前の手ェ握ってるから」



銀ちゃんは不思議な人だと思った。何処か掴み所が無くて、それなのに私のことは何でも分かっている様で。



「ねぇ、――狡いよ、銀ちゃんだけ、さ」



私は笑いながら涙を流した。

一度は呑み込んだそれも、今はせき止めることもできず、ぼろぼろと零れ落ちる。頬を濡らし伝い落ちるそれは、まるであの景色と同じにキラキラと光り輝いていた。



「私だって、銀ちゃんの気持ち、いっぱい分かってあげたいのになあ……。だって、全部先取りしちゃうんだもん」



そうだ、銀ちゃんはズルい。いっそのこと思い切り泣き喚いて引き止めてくれればいいのに。なのにそうしようとはせずに、寧ろ有りっ丈の愛で包み込んで抱き締めて、私を安心させてしまうんだから。

不安は無かった。ただもう少しだけ銀ちゃんの隣に居させて、それから、一生分の幸せを感じさせて。そうしたらきっと安らかに逝ける。幸せな私のままで、――銀ちゃんに愛された、私のままで。


心の中でありがとうとごめんねを繰り返す。好きで好きで好きで、堪らなく愛していたのだ。伝えたくても伝えられない程、私のすべては銀ちゃんへの愛で溢れ返っていた。本当に本当に、大好きなんだ。


話したい事も告げたい言葉も沢山あった。けれど、私が最期に紡ぎ出したのは、



「おやすみ……、銀ちゃん」



また目が覚めたら、おはようって言ってよね。


――そして私は静かにそっと、瞳を閉じた。






》to be continue..




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