永遠の愛を謳おう





「――結婚、してくれ」






お前に出逢えて、お前を好きになって、本当に良かった。



「好きなんだよ、お前が」



俺は少しだけ微笑んでから、その細い腕を掴んで抱き寄せる。戸惑いを隠せないのだろう。彼女は刮目したまま、微動だにせず固まって。しかし次第に白雪のような肌が熱を帯び、俺の胸に顔を寄せる彼女が、小さく、小さく吐息を零したのが分かった。


――すき?


わたしを、好き?


何度も確認するように呟く彼女を更に抱き締め、俺はあァ、とひとつ頷いた。愛しくて、恋しくて、堪らないのだ。

彼女の額が俺の胸に押し付けられる。たったそれだけで触れ合った肌と肌が燃えるように熱くなり。どきどきと速く大きく鼓動して、心臓が歓喜に震える。



「ねえ、聞こえてる?」

「聞こえてる、って?」

「へへっ。私も、いま、凄くドキドキしてるんだあ……」



彼女が両耳を火照らせて、微かに笑ったのが頭上からでも分かった。この馬鹿みたいに打ち続ける心音が、彼女にも聞こえてしまっているに違いない。

彼女を抱き締めている、それだけでこんなにもときめいている、だなんて。笑いたければ笑えばいい。男らしくなくたって、それでも、俺は。



「あァ、聞こえるぜ。お前の心音も、……それだけじゃねェ、お前の体温も全て、感じられる――」



やはり構わないと思った。俺が彼女を愛している、証明になるのならば。それが彼女に直接伝わる、何よりのモノになるのならば。隠す必要はない、恥じる必要もない。お前が好きだ――、ただ溢れ出す想いは唯一絶対の真実なのだから。



「土方さん……」

「お前の音、すげェ落ち着くんだよ。俺達、まるで距離がねェみてーだなァ」

「うん、うん。そうだねっ。二人で一つみたいだよね」



ぱあっと。嬉しさが滲み出た表情を上向けて彼女は幾度と頷き、そして花のように愛らしく笑んだ。華やかで美しく、それでいて儚くて守りたくなる。

それが俺を突き動かす全てなのだと、彼女は知りもせず。ただ純粋無垢に、可憐な花を咲かせる。


俺は彼女の頬を指でなぞると、その輪郭を手のひらで包み込んで。口元に笑みを浮かべたまま俺を真っ直ぐに見詰めて来る彼女の名前を、呼んだ。



「姫、」



我ながら真剣な目をしていると思う。けれど刀を握った瞬間とはまるで違う、愛おしい者を見る、それ。恐らく、生涯で唯一彼女にだけ向けられるであろう優しい眼差し。



「最初で最後の願いでいい。俺と一緒に、来てくれねーか」

「……それが、土方さんのワガママ?」

「あァ、そうだ」



一陣の風が通り過ぎて、二人の髪を靡かせる。俺は風の行く先を目で追いつつ、抱き寄せる身体を離した。そして素早く彼女の指を取ると、魂の誓いを口付けに乗せて、俺は謳う。



「俺と生きて、生きて、生きて、そしたら…―――」



愛しいひとが綻んだ、刹那、世界はこれまでよりも目映い輝きを放ちはじめた。






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