「い・や・だ!」
自室のベッドの毛布にくるまって、あたしはスクアーロを睨みつけた。
「ゔぉおい、オレをあんまり困らせるな」
「じゃあスクアーロはあたしが苦しんでもいいんだ」
「そぉいうわけじゃねぇ!」
「とにかく、絶対に嫌だから」
「んじゃあそのまま一生苦しんでおくんだな」
「だってベルがあそこはすごく怖いとこだって…」
「ガキか、てめぇは」
あの機械音が嫌。中で何をしているかも分からないし、鼻につくキツい匂いも気にくわない。
あんなとこに行ったら頭がおかしくなる。
「オレも一緒に行ってやるから」
「…スクアーロも?」
「あぁ」
「……じゃあ行く」
xxx
「名前様!やっと来てくださったのですね」
「さっきベッドから引っ張り出したところだがなぁ」
「うぅ…だってー…」
「大丈夫ですよ、名前様の歯は我々が責任を持って治療しますから!」
そう、あたしがさっきから行くか行かないかでスクアーロと争っていたのは歯医者。
一昨日からずっと歯がずきずきして、夜も眠れないし任務にも集中出来ない。
でも歯医者だけはどうしても行きたくなかった。
「歯医者が嫌なんてガキじゃあるめぇし」
「いやっ!歯を削ったり、抜いたり、注射したりするんだよ!?スクアーロにはこの恐ろしさが分からないの!?」
「んなもん、ボスのグラスに比べりゃあなんとも思わねぇぞ」
「そっか、スクアーロドMだもんね」
「違ぇ!!なんでそうなるんだぁ!」
スクアーロはドMだから耐えられるかもしれないけど、あたしはSなのだからこんなの耐えられない。
そもそも、スクアーロがあたしの歯の異変に気づかなかったら、自然と抜けてくれるまで我慢して待ってたのに。
「スクアーロなんか知らない」
「…名前の歯が治らねぇとオレが困るんだ」
「どうして?」
「名前が痛がってキス出来ねぇだろ」
ぼぼぼっと顔が赤くなるのが自分でも分かった。こいつ…公共の場でよくもそんな余裕の笑みで言える…。
「お前が極度のシャイなだけだろぉ」
「うるさいっ!読心術使うな!」
「いいから早く治して来い。治ったらいくらでもキスしてやるからよぉ」
ニィッと口の端を上げて、ぷにぷにとあたしの唇を触るスクアーロ。
いや、なんであたしがキスしてもらいたいみたいになってるのよ。
「…キスしてもらいたくて治しに行くんじゃないからね!痛くて治すんだよ!」
「分かった、分かった」
ニヤニヤと笑うスクアーロをほって、あたしは医務室に入った。
(終わったのかぁ?)
(治療後はまだ痛いからキスしないで)
(ゔぉおい!それはねぇだろ!)
この先、立ち入り禁止区域
(照れ隠しだ、ばーか)
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by 真 白
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