真っ白な教会のとある控え室。オレはあいつの顔を見に、部屋まで行った。
コンコン。
「はーい、どうぞー」
「入るぞぉ」
「スク!来てくれたんだぁ!!」
嬉しそうな顔をしてオレに抱きつく名前。オレはセットされた髪がくずれないように、名前の頭を撫でた。
「ほらよぉ」
「ふわぁ…!!めっちゃ綺麗」
オレはさっき花屋で買ったブーケを、名前に渡してやった。
「…結婚、祝いだぁ」
「ありがとう」
名前は今日、オレが知らない男と結婚する。
オレと名前はヴァリアーの幹部同士だった。オレは名前が好きだったし、オレに良く懐いていた名前もオレに好意を持ってるだろうと思ってた。
…けれど、それは自惚れにすぎなかった。名前からあいつの話を聞いたとき、あいつを殺してやろうかと思った。
だが、名前の幸せそうな顔を見ていると、そんたことは考えられなくなった。
「あたし、ブーケトスでスクを狙ってあげるね!」
「そいつは大きなお世話だぁ」
「だってスク、好きな人いるんでしょ?だから、スクの恋が実りますようにって」
その女は名前だとここで言ってしまえば、どんなに楽だろうな。
名前をここで連れ去ってしまえば、名前は永遠にオレのものだ。
むしろ、あいつを殺してやって、悲しむ名前を慰めてつけ込めばいい。
何度も思ったが、それはどれも名前の笑顔にかき消された。
「スク、本当にありがとうね」
「おぅ」
「あたしがいなくなって、泣くんじゃないよ!」
「泣くわけねぇだろぉ!!」
名前は結婚をしたら、ヴァリアーから脱退する。
相手が一般人だから、普通の人に戻って幸せな家庭を築くとかなんとか言ってたなぁ。
この式が終わったら、オレと名前が関わることはもう二度とないだろう。
オレはそれでよかったと思う。その方がこいつを忘れられる。
「名前様、そろそろお時間です」
「はい」
「綺麗だぜぇ、名前」
「スク、本当に…ーっ」
名前の目が充血していた。どうせ、今までのこと思い出して泣いちまってるんだろうな。
「泣くんじゃねぇ」
「うぅーだってスクが〜」
「ゔぉおい、オレのせいかよ」
泣きじゃくる名前の背中をさすって、落ち着かせた。
「幸せになれよぉ」
「うん、うん…」
これからは名前が泣いても、オレは指でこいつの涙をぬぐってやれねぇ。
あいつが傍にいて、名前の涙をぬぐうんだろうな…。泣かせたらただじゃおかねぇけど。
「行く、ね」
「おぅ」
名前から離れてオレは一歩後ろに下がった。これでもう、本当の別れなんだなぁ。
「名前、」
オレは式場に向かう雨芽を呼び止めて、今まで言いたくても言えなかったことを告げた。
「好きだぜぇ」
「あたしも…スクのこと大好きだよ」
名前は笑って式場へ向かった。
声が枯れるまで君に好きと
(伝えられずにはいられなかった)
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最後のは友情的な好きのつもりで書きました(´・ω・`)
by 真 白
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