「またここにいたのかぁ?」
「…スクアーロ隊長」
ここは、任務で死んだ仲間を弔う慰霊碑。あたしの最愛の人は、今はこの中で眠っている。
数ヶ月前の任務で、あの人はあたしを庇って死んだ。…馬鹿な人。
あたしが死んだ方がよっぽどましだった。残されることが、こんなにも辛いなんて知らなかった。
「そろそろ時間だぞぉ」
これからあたしたちは、任務に向かう。あの人が殺されてからというもの、あたしは人を殺すのが怖くなった。
今まで殺してきた人たちの中にも、家族や恋人がいたかもしれない。残された彼らは、今何を思っているんだろう。
そのことを知ってか、任務中はいつもスクア−ロ隊長が傍にいてくれる。
「いつまで続けるんでしょうね」
「あ゙ぁ?」
「あの人が殺されて、嫌というほど辛い気持ちが分かったのに…」
「…ゔぉおい」
「それでもあたしは、人を殺し続ける」
もしかしたらこれは、罰なのかもしれない。命の重さを知らなかったあたしへの罰。
「殺しは最小限に」これがあの人の口癖だった。暗殺者とはかけ離れていた彼は、よく仲間からも笑われていた。
でも、今なら彼の言っていた意味が分かる気がする。
「終わらねぇぞ」
「…え?」
「オレもお前も、もうこっちの世界に足を入れちまったんだぁ」
「もう抜け出せないってことですか」
「…死ぬまでこの罪を背負わないとなぁ」
スクアーロ隊長の言うとおりだ。隊長は一体、何人の命をその背中に背負い込んでいるんだろう。
…隊長があたしのようになったら、一体誰が隊長を包んでくれるんだろう。
「泣くんじゃねぇ、名前」
「だ…だって……っく」
こういうとき、あたしを包んでくれるのはいつも隊長だ。あの人には悪いと思っても、つい、隊長の優しさに甘えてしまう。
「…すみま、せん。隊長」
隊長の重荷にはなりたくない。面倒な女と思われたくない。
そう思って、隊長の腕から離れようとした。…だけど、その腕が離れることはなかった。
「オレじゃダメかぁ?」
「…え?」
「オレはあいつのように名前を置いてかねぇ」
「たい、ちょ」
「いつでもお前を、包んでやれる」
あの人が殺されてから、生きる屍だったあたしを救ってくれたのは隊長だった。
いつしかあたしは、隊長の支えになりたいと思っていた。
「…でも、」
あの人のことは今でも忘れられない。だけどもう、この腕を振りほどくことは出来ない。
あの人以上に、目の前にいる隊長が愛しい。傍にいたいって強く願っている。
幸せになってもいいの?殺ししか出来ないあたしが、こんなにも優しい人に包まれてもいいんですか?
隊長にはあたしみたいな女は、不釣り合いだし、きっとただの重荷にしかならない。
その想いを隊長に伝えると「オレも同じだぁ」って笑ってくれた。
慰霊碑の前で、あたしたちはお互いの存在を確かめるよう、何度も貪るようなキスを交わした。
静寂の喪失感を抱いて
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なんだか難しい話になってしまった(^ω^;)
by 真 白
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