イタリアと日本という遠距離恋愛。長い長い歳月がかかったけど、今日初めてあたしはイタリアに来た。


あたしの彼氏、S・スクアーロはイタリア人。出逢いは日本。道に迷っていたスクアーロを案内したのが始まり。それからよく街で会うようになって、お互い惹かれていった。




空港からスクアーロに会いにいくために、指定された駅へと向かう電車に乗る。日本の地下鉄の電車とは違い、レトロ感があり安心する。


最初は人がたくさんいて、窓の外を流れる景色も賑やかだったけれど、だんだんと降りていき、気づけば電車にはあたしだけ。窓の外も田舎の風景になっていった。



「ふぁ〜…んー…」



長旅のせいか、だんだんと瞼が重くなってきた。でも、寝ちゃったら乗り過ごしちゃうかもしれないし…うんー…。


コクリ、コクリと首が数回動いたかと思うと、あたしの意識は夢の中へ旅立った。






xxx






今日はオレの女の名前がイタリアに来る日だ。名前が成人になるまで待って、やっとイタリアに呼ぶことが出来た。名前と出会ったのは名前が高校生だったからなぁ…よく思えば長かった。


こんなに一人の女を長く愛したのは初めてだった。だからこそ、名前をイタリアに呼んで一緒に暮らしてぇと思えた。…もう、絶対に離さねぇ。



待ち合わせしている駅のホームに、名前が乗っているはずの電車が来た。降りてくる奴を確認していくが、名前の姿はない。



「…どうしたんだぁ?」



さっききたメールで、確かに名前はこの電車に乗っていると書いてあった。ピーッという電車の発車を知らせる音とともに、ドアが閉まった。


…もう一本遅いやつかぁ?仕方なく、オレはさっきまで座っていたベンチに再び腰掛けた。ゆっくりと進む電車。ふと、オレは電車に目をやった。



「……………は?」



目をやった先には、窓に頭を預けて寝ている名前がいた。


あいつ何してるんだぁ?って、ゔぉおい!なんでまだ乗っているんだぁ!?


気づいたときにはすでに遅く、電車はスピードを上げて走り出した。



「チッ」



オレは軽く舌打ちをし、走る電車を追いかけた。まぁ、オレにとってはこれくらい走って追いかけられる速さだからなぁ。ヴァリアークォリティーってやつだ。


プルルルル。


名前を起こそうと思い電話をかける。だが、名前は一度寝たらなかなか起きねぇ。一か八かだぁ。



「ガチャ。名前はただいま電話に出れません!ピーッという発信音のあとにダイイングメッセージを残して下さい」



意味の分からねぇ留守電いれやがって…。ダイイングメッセージってあれだろ、殺された奴が残すメッセージじゃねぇか。


負けじともう一回かける。生憎、次の駅までは一時間かかる。ったく…何回も、何回も名前に電話をかける。十回以上したとき、やっと名前が目を覚ました。



「…ーん、もしもし」


「ゔぉおい!てめぇ、何してやがる!?」


「スクアーロ…耳痛い」


「うるせぇ!外見ろ、外!」


「外………スクアーロ、何してんの?」


「ったく、窓開けろぉ」



名前が窓を開けたことを確認して、電車を切る。電車から少し離れた森の木を飛び移って追いかけていたが、木から飛び降り名前が開けた窓に飛び乗る。



「うわっ!?危ないよ!スクアーロ!」


「誰のせいだと思ってるんだぁ?」


「…寝過ごしてごめんなさい」


「分かればいい」



ドカッと名前の隣に座る。名前はカバンからハンカチを取り出し、うっすらと額に浮き出たオレの汗をふく。



「次の駅で先に行って待っててくれたらよかったのに」


「名前に早く会いたかったんだぁ」


「…え?」


「…悪いかぁ?」


「ぜっ全然!…というか、嬉しい…」



顔を赤く染めて微笑む名前。これから毎日この笑顔が見られるんだと思うと、胸が高まった。



「目を閉じろ」


「…ん」



静かに、ゆっくりと揺られる2人っきりの電車の中。オレたちは再会を喜び合うキスをした。




コールを無意識に数えて
(君に早く繋がるようにと)


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ヴァリアークォリティーすげぇ←

by 真 白





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