「なんでこういう日に限って豪雨になるのかなー」


「バレーは室内だから大丈夫ですよー」


「…バレーが外だったらよかったのに」




ディーノ先生に鍛えられたせいでまさかの筋肉痛。階段を上がれば太ももは悲鳴をあげ、腕を伸ばせば二の腕に激痛が走る。




「雨芽が顔面アタックするのを期待していますよー」


「…本当にやりそうだから言わないで」




とりあえず、筋肉痛を理由に欠場なんて出来ないから試合には出る。あたし以外の出場選手はバレー経験者だから、順調に勝ち進んでるんだよね、これが。




「蓮野さーん、いったよー!」


「ほいほーい」




ディーノ先生に教えてもらった通りに身体を動かす。ボールをよく見て距離感を取ってから腕を伸ばす。うー…やっぱり腕が痛い。でもこれに勝てば決勝だから我慢、我慢。




「雨芽ちゃん頑張れー!」




おおう、やっぱりハルと京子の応援は可愛いな。準決勝ということで、クラス全員が応援に来てくれている。フランはどこかに行っちゃったけど。


…あ、当たり前だけれどクラス担任のスクアーロ先生も応援に来ている。普段のスーツとは違って、ジャージ姿の先生。白いジャージに、後ろで一つに結んでいる長い銀髪が栄えている。



ピーッ。



笛が鳴り響いて休憩に入る。クラスの子が渡してくれた水分を取って、のどを潤す。二階の方をチラリと見たら、フランとベルがいた。…あの二人なぜかいっつも一緒にいるんだよね。仲良い…のかな。




「蓮野さん、先生が呼んでるよ!」


「あ、うん」




試合ごとに先生からアドバイスをもらう。ディーノ先生みたいにバレー部の顧問ってわけじゃないけど、スクアーロ先生のアドバイスは分かりやすい。




「雨芽は腕が伸びきってねぇ」


「…気をつけます」




教室での出来事以来、先生と顔を合わせずらい。先生は普通に接してくれているけど、どうしてもあたしは普通に接することが出来ない。



ピーッ。



試合開始の笛が鳴り響く。コートに戻るとき、ふと後ろを振り向いたら、スクアーロ先生の周りに2、3人の女の子がいた。




「スクアーロ先生!一緒に写真撮って下さい!」


「ん゙?…まぁ、かまわねぇが」




先生と一緒に写真を撮る女の子たち。…いいな、あたしも一緒に先生と写真を撮りたかった。もし、あの時あたしが先生に気持ちを伝えていなかったら、あたしたちは今頃どうなっていたんだろう。


毎日遅刻して、先生に怒られて小突かれて…お昼は一緒に食堂まで行って…放課後は生徒指導室に入り浸って、先生と話しをして。きっとその方が幸せだったんだろうな。




「雨芽ちゃん!ボールいったよ!」


「え?」




ガンっと頭に激痛が走って、視界が真っ暗になった。






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球技大会。雨芽の試合を近くで見ようと思ったけど、スク先生が近くにいたから止めて違う場所を探していたら、ベル先輩に捕まった。


なんなんでしょーねー…この堕王子は。なんでミーが堕王子と一緒に試合を見なくちゃ行けないんでしょうかー?横にいるベル先輩は珍しく、真剣に試合を見てますし…。


試合の方に集中しようと目線を戻したとき、丁度雨芽のところにボールがいったときだった。…?なんかぼーっとしてるけど大丈夫なんですかねー?しかも目線はボールじゃなくて…あー…やっぱりスク先生なんですねー。


雨芽の視線に気づかず、女子と写真を撮る先生を見て腹が立った。それでも先生を見つめる雨芽を見ていられなくて、試合から目を伏せた。


そのときだった。バターンッと音が響いて、顔を上げるとボールが転がっていて、雨芽が倒れていた。一瞬なにがあったのか分からなかった。だけど、横にいたベル先輩の行くぞ!という声にはっとして、ミーたちは雨芽の元へ走った。






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「雨芽!」


人だかりをかき分けて、雨芽のいる場所にたどり着く。急いで保健室に連れて行こうと、雨芽に腕を伸ばしたとき、横から別の腕が伸びてきた。




「なん、で…」




女子と一緒に写真を撮っていたはずの先生がなんでここにいるんですかー…?しかも、そんな心配した顔をする先生なんて、見たことがないんですけどー。…でもミーはここで雨芽を先生に渡したくない。




「…雨芽に触らないでくださーい」




パシッと先生が伸ばした腕を払いのけた。一瞬、先生は驚いた顔をしたけど、その顔はすぐ険しい顔に戻った。




「こういう時にしか触れられねぇんだぁ」


「…え?」




ボソッと呟いて、スク先生は雨芽を抱えて行ってしまった。しばらくその場から動けなかったけれど、ベル先輩に肩を叩かれ、気がついたときには別のコートで試合は再開していた。






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誰かが倒れた音がしたかと思ってコートの方に目を向けると、一瞬、血の気が引いた。雨芽が倒れている。気がついたら、オレは雨芽の元へ走っていた。




「どけぇ!」




雨芽を急いで保健室に連れて行こうと腕を伸ばす。こんなときにこう思うのもあれだが、教室でのこと以来、雨芽はオレのことを避け続けていたのは分かっていた。


オレの自己満足だとは分かっているが、雨芽と話せるならなんだってしてぇ。正直、雨芽に好きだと言われたとき、オレも好きだと言いそうになった。


だが、あそこでオレの気持ちを告げてしまったらどうなる。もしかしたらバレちまうことに怯えながら、一緒にいるなんて雨芽の負担にしかなれねぇ。









…だが、どうやらオレは自分でも驚くほどに雨芽に惚れちまっているらしい。








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11/07/23









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