「ゔぉおい、お前ら何時だと思ってんだぁ?」
神様はいじわるだ。関わらないよう、必死で避けていたスクアーロ先生が担任だなんて。
ざわざわとあたしとフランに注目するクラスメートたち。教室に入ろうとしても、足が固まって動けない。
どうしようもなくなって、ぎゅっと目をつぶって下を向いたとき、ふわりと、手のひらが温かいものに包まれた。
「雨芽が寝坊したんでーミーが迎えに行っていましたー」
「…今年もかぁ。ったく、お前らは放課後残っとけぇ」
「はーい」
ぐいっとフランに手をひかれ、席に向かう。その光景を見て、クラス内が一瞬静かになる。
そりゃそうだ。ケンカばっかりしていたあたしたちが、いきなり手をつないで登校してきたんだから。きっとみんなが考えていることは同じはず。
席につくと、前の席の京子から手紙が回ってきた。おおう、可愛いメモ帳だなぁ。
『雨芽ちゃんって、フランくんと付き合っているの?』
ほら誤解された。だけど、あのときのフランには感謝している。
あそこでフランが手を引っ張ってくれなかったら、あたしはあの場から逃げ出していたと思う。
『付き合ってないよ』
ただひとこと、それだけを書いて京子に渡した。
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「よっ」
「あ、堕王子ー」
「本当だ、堕王子だー」
「てめぇらのその口、縫い付けてやろうか?」
放課後になって、仕方なくフランとスクアーロ先生のところに行こうとしたら、ベルと会った。
たしか、最上級生の教室は食堂に近いんだよなぁ。いいな…お腹空いてきた。
「ねぇ、先生のとこに行った後、食堂行こうよ」
「あ?スク先生んとこ行くのかよ」
「雨芽のせいですけどねー」
「うぅ」
「ふーん。だったら逆だぜ?」
ん。とベルがあたしたちが向かう方向と逆の方向を指さす。
…職員室はこっちだけど…そっちに行ったら、雲雀さんの応接室とか、骸先輩の生徒会室とかー…あと生徒指導室?
「今年の生徒指導はスク先生らしーぜ」
「マジかっ!?」
「厳しくなりそーですねー」
クラスの担任、そして生徒指導の先生。…なんか今年は嫌でも先生と関わらなくちゃいけない…。
でもこのまま避け続けるのもなんかアレだし…。うん、普通に接しよう!なんか開き直ってきたわ。
そう思って到着した生徒指導室の扉を開けようとしたときだった。
「ゔぉおいっ!」
「ヒィッ!?」
スクアーロ先生の…なんだっけあれ?雄叫び?とともに、どこかで聞いたことのあるような声が聞こえてきた。誰だっけなぁ…。
ガチャリと扉を開けると中にはスクアーロ先生とツナマヨ君がいた。
「ツナマヨ君!!」
「綱吉だけど!?」
「あ゙ぁ?てめぇら知り合いかぁ?」
「はっはい、朝に会った同級生でー…」
…ちょっと待って。今、ツナマヨ君、同級生って言った?ツナマヨ君って一年生だよね…?
あれ?あたし無事進級したよね?まさかの留年していたりする?…笑いを必死でこらえている先生とベル。…うん、進級はしているか。
「あのねツナマヨ君…あたし2年生なんだ」
「だからツナマヨじゃないって…へ?」
「うしししし。まぁ雨芽なら間違えられても仕方ねーだろうな」
うしし、うししうるさいベル。笑いをこらえるのに必死で、後ろを向いて肩を震わせる先生。最初からそうだろうと分かっていたであろうフラン。
「…ご、ごめん!じゃなくてすみません!!」
「…もういいよ、ツナマヨ君。敬語もいらないよ」
しょぼーんとうなだれて、指導室のソファに座る。ここは保護者も訪れる場所だから、ソファが応接室並みにふかふかだ。
「どうしよう、雨芽…さんなんか落ち込んじゃってるよ」
「ほっとけぇ、あいつはああいう奴だぁ」
「雨芽の機嫌を直すのは簡単ですよー」
「え、そんな方法あるんですか!?」
4人でごにょごにょ話しているすきに、テーブルの上に置いてあった接待用のお菓子を少々いただいた。
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11/07/04
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