「ふっわぁー…超豪華…」
さっきまでパイまみれだった談話室は、ルッスの手によって綺麗に飾られていた。
いつのまにか、テーブルの奥にはザンザスさんが座っていて、横にはレヴィさんが立っていた。
「そうかぁ?名前のときはもっと派手にやるぜぇ?」
「十年後のあたしって…」
「あら、2人とも来たのね。早く座ってちょうだい」
「はーい」
それにしても、ルッスは料理がすごすぎる。
あたしが作ったのなんて、山本家直伝のお寿司とちらし寿司くらいで、ここのテーブルにあるほとんどの料理はルッスが作ったもの。
「この寿司、名前が握ったのかぁ?」
「あ、うん。なんで分かったの?」
「てめぇは誰かの誕生日になるといっつも作っていたからなぁ」
どうやら、山本家お祝い事大好きの血は十年経っても健全らしい。
「うしし、名前の寿司は美味いもんな」
「ミーはちらし寿司の方が好きですー」
なにが合図で始まったのか分からないけれど、ベルとフランはもう食べ始めていた。
よっし!こんな豪華な料理は一生に何回食べられるか分かんないから、今のうちに食べておこっと!
でも、こんだけあったらどれにしようか迷うなー…。あたしはとりあえず、目の前にあった飲み物を口に流し込んだ。
「…う゛ぉおい、名前。今何を飲んだんだぁ?」
「ふぇ…?」
「げっ、まさかその手にあるのって…」
「ボスー、名前先輩がお酒飲みましたー」
「あぁ?」
少し焦った顔であたしを見つめるみんな。…ん?あたし何か変なことしたかな。というか、頭がぐるぐるする。
はれ?スクアーロが2人?むん…。イケメンが2人…。うんうん、なんか頭がぼやぼやしてきた。
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「しゅくあーろが2人…」
「あ゛ぁ?」
「やっべ王子しーらね」
「ふへ、ふへへへへへへっ」
「名前先輩の頭が飛びましたー」
名前は酒にかなり弱い。酒入りの菓子を食っただけで酔うくれいだぁ。…そんな名前がワインを一気に飲み欲しやがった。
以前、名前が酔ったときにはアジトが半壊した。それからというもの、ボスは名前に対して酒類飲食禁止令を出しているほどだ。
「う゛ぉおい!!!名前、落ち着けぇ!!その手に持ってるもんどっから出しやがったぁ!?」
「てーぶるのうえにあったんらもーん」
「ちょっと誰よ!?テーブルの上に拳銃なんか置いたの!」
「ベル先輩ですー」
「うしし、スクアーロに当てようと思ったんだけどな」
名前の銃の腕は……正直言って最悪だぁ。例えるならボンゴレにいる毒サソリぐれぇだ。剣の腕ならオレや山本武に劣らねぇが、銃だけはどうも相性が合わないらしい。
「…名前」
「なんれすかー?ざんざすさん」
「その銃をしまえ」
「えー…らって、今から名前ちゃんの素晴らしい銃の腕前をひろうするんです。ひっく」
「…しまわねぇとここから追い出す」
ザンザスの言葉に名前の肩がぴくっと動いた。そういやぁ、前に名前が暴れたときも止めたのはザンザスだったよなぁ…。
「うぅー…それはいやれす。ここにいたいです。…ぐすっ」
酔って急にテンションが上がったと思えば、今度は泣き出しやがった。…ったく、名前の酒癖にはまいったぜぇ。
「ザンザス、…名前はオレが部屋に連れて行くぞぉ」
「…勝手にしろ」
くずくず言う名前をあやしながら、手の中の銃を置き、名前を抱えてオレは談話室を後にした。
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「う゛ぉおい、いい加減泣き止めぇ」
「…ぐすっ、ざんざすさんにいらないって言われたー…」
「あんなの本気じゃねぇよ」
…いらねぇとまでは言ってねぇだろ。だが、今の名前には何を言っても無駄だろうな。
「もう寝ろ」
ぐずる名前をベットに寝かせ、毛布を掛けようとしたら手を止められた。
「…名前?」
「すくあーろ…一緒に寝よー」
「あ゛ぁ!?」
「ひとりは、寂しいの…」
…そういやぁ、ここに来てからの名前は妙に気を張っていた。こうやって弱音を吐いたのも今が初めてかもしれねぇな。
「…今日だけだぞぉ」
「ん、ありがと」
オレは名前の横に身体を滑り込ませ、腕を名前の下に敷いてやった。
「おやすみ、スクアーロ」
「Buonanotte」
(んー…すくぅ…)
(どうしたぁ?)
(すぴー)
((…寝言かぁ))
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