「うわぁ…広すぎる…」
二日目の朝、ルッスに起こされてあたしは厨房に来ていた。
「さぁ!一緒に頑張るわよ〜」
「ルッス、主語を言って、主語を」
「んもぉ、だからスクちゃんの誕生日会の準備をするのよ」
「スクアーロの?」
「そうよ、当日は名前が帰る日だから日を早めたの」
スクアーロの誕生日会。今のあたしに出来ることっていったら、スクアーロの誕生日を盛大に祝うことだよね…。
よしっ、お祝い事大好きな山本家の血が黙っちゃいないし!スクアーロがびっくりするような誕生日会にしよ!
「ルッス!あたしお寿司作る」
「だったらこっちにネタがあるわよ〜」
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「スクアーロ、ハッピーバースディ」
「ミーたちから囁かな誕生日プレゼントですー」
名前がルッスーリアに連れて行かれて、暇を持て余し談話室で剣の手入れをしていたまではよかった。
「う゛ぉおい、その手に持っているのは何だぁ?」
「「パイだけど?/ですよー」」
「それ以上近づいてみろ!!ただじゃおかねぇぞぉ!!!」
「うしし、無理」
「いきますよー、そーれっ」
フランが投げたパイを剣でかわした。…せっかく手入れしたのによぉ。
「よけないでくださいよー」
「んじゃあ、どんどんいくか」
どこから持ってきたのか、大量のパイをベルが机に運んできた。
「…上等だぁ。てめぇらまとめてかっさばいてやる」
「そーこなくっちゃ」
「あー、怖い怖い」
こうしてヴァリアーパイ投げ合戦は始まった。
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「よし、ルッス!出来たよ」
「こっちも完成よ〜…そうね、運ぶからベルとフラン呼んできてくれる?」
「わかったー」
フランとベルは談話室にいるかなー?…スクアーロ、喜んでくれたらいいな。
ガチャッと談話室の扉を開けたときだった。
「へぶぅ!?」
「う゛ぉおい!!大丈夫かぁ?」
「んーなにこれ、ベトベト」
「うしし、名前どんくせー」
「今のはベル先輩が投げたんですよー。ミーじゃありませんからねー」
…パイ?え、よく見たら部屋の中パイまみれなんですけど!?スクアーロの髪なんか、普段のキューティクルさを失ってるし!
というか、フランとベルはまったくパイがついてないのになんでスクアーロだけこんな盛大に…。
「あいつらが嵌めやがったんだぁ」
「…お疲れ様」
げっそりとしたスクアーロの顔。これが本当に今日の主役の顔なんだろうか…。
「名前〜!ベルたち見つかったかしら?…あら?」
「げっ、オカマじゃん」
…ルッスからただならぬ殺気を感じるんですけど。そりゃあルッスが今日のために綺麗にした部屋をここまでされたら…ねぇ?
「ベルちゃん、どういうこと?」
「王子知らねーし、」
「ベルせんぱーい、逃げるなんて卑怯ですよー」
「逃げてねーよ」
「ベルちゃんとフランはここの片付けをしなさい!!名前とスクアーロはお風呂に入ってくること!!いい?分かったらさっさといきなさい!!!」
ルッスがベルとフランをつまみあげて談話室に放り込んで、あたしとスクアーロは廊下に投げ出された。
「…行くかぁ」
「…うん」
とりあえず、このべとべとになった身体をきれいにしよう。そしてあとで、ベルとフランに復讐してやる!
やられたらやりかえすのが、山本家の教育だからね。うん。
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