「姉ちゃーん」

「はいはい、今行くよー」



あの日、弟の武と一緒に武の友達のツナ君の家に遊びに行こうとしていたまではよかった。


…どうしてあんなことが起こったんだろう。



xxx



「なんで今日、あたしも呼ばれたんだろうねー」

「ん?分かんねーけど、小僧が呼んでるらしいぜ?」

「…そこが怪しいの」



リボーン君のお呼びだし。それが理由でツナ君の家に向かってるけれど、リボーン君のお呼びだしで良い思いをしたことは、今まで一度もない。



「今日は何するんだろー…この前は並盛り山にバーベキューとか言って、結局遭難したし」

「マフィアごっこじゃねーの?」


「武、あんたはいつまでも純粋な山本武でいてね…」

「ははっ、俺は生まれたときから山本武なのなー」



武は知らないだろうけど、マフィアごっこじゃなくってリボーン君とツナ君は本物のマフィア。

そして武をぶっそうなことに巻き込まないでと、リボーン君に訴えたあたしもいつのまにかボンゴレとかっていうファミリーの一員になっていた。



ピーンポーン。



うだうだといろいろなことを考えていると、ツナ君の家のインターホンを武が押した。

ガチャッというドアが開いたと思ったら、玄関にはバズーカを持ったツナ君。



「………ツナ、君?」

「名前さん、ごめんなさい!!」



ツナ君がバズーカを打ったと思ったら、あたしは白い煙に包まれた。



え、なにこれ、どういうこと!?なに、あたし死ぬの?ちょ、まだやりたいこととかたくさんあったのに!!



「ぎゃふ!」

「う゛ぉ!?」



女の子とは思えない声を上げて、どこかに着地した。……というか誰かを踏み潰してしまった。

あれか、きっと天使とかいうやつかも。



「…………ー名前?」

「え、なんであたしの名前を…にゃふぅ!?」



いきなり名前を呼ばれたかと思うと、天使に抱き締められた。…天国の挨拶って、外国みたいに大胆なんだなぁ。



「あのー…ここって、何ですか?天国?もしかして地獄?」

「オレのことが分かんねぇのか?」



抱き締められていた腕が離れ、やっと顔を見れた。

さらさらと透き通るような銀髪、するどい目、綺麗な薄い唇。あたしはその顔に釘付けになった。



「……オレはスクアーロ、お前の恋人だぁ」

「ここここ、恋人?」


「といっても十年後のだがなぁ」

「十年後っ!?」


「名前が被弾したのは十年バズーカといってなぁ、当たると十年後の自分と5分だけ入れ替わるんだぜぇ」



…つまり、ツナ君はこうなることを分かっていてあたしに謝ったんだね。だけど、なぜあたしを十年後に送ったのか分からない。

でも、5分すれば戻れるはず………ん?5分?



「……もう10分は経ってるぞぉ」

「……………ー、」


「う゛ぉおい、名前?」

「過去に戻れてないじゃないですかあああああああ!?え、何!?どうしよう、え、」


「落ち着けぇ!!!」



いや、これが落ち着いていられますか!?いきなり意味不明の場所に来て、そして過去には帰れない。……やばい、泣きたくなってきた。



「ふぇ、」

「ったく、すぐに泣くのも変わらねぇな」



スクアーロさんは指で優しく涙を拭ってくれた。



「行くぞぉ」



抱き締めていた腕を離して、しゃがみ込むあたしを立たせてくれた。



「どっ、どこにですか?」

「十年後のお前の勤め先だぁ」



勤め先…?嘘だ、あたし学校の先生にお前は絶対に就職出来ないからな、って言われるくらい勉強出来ないのに!!



「スクアーロさん、」

「スクアーロでいい、敬語もいらねぇ」


「はい、あ、うん。あの、あたしって就職出来てたの?」

「あ゛ぁ?」

「いや、未来のあたしってどこに就職したのかなーって」



あたしを拾ってくれるなんて、よっぽどの親切しかいないよね。…自分で言ってて悲しくなった。



「……独立暗殺部隊ヴァリアーだ」

「……………暗殺?」


「お前はオレと同じ幹部だったんだぞぉ」



暗殺ってあれだよね、人を殺すやつ。いやいや、映画の中とかだけの話じゃないの?でもリボーン君って銃持ってるし。

リボーン君のせいで暗殺やってるとしか思えなくなってきた。過去に戻ったら聞こう。あ、過去に戻れないんだっけ?あーあ、武は元気にしてるかなー。あたしのこと心配しているかな?



ああ、なんか考えることが多すぎて頭がぐるぐるしてきた。……ふらふらする。

あたしの意識はそこで途切れた。








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