「名前がまたいなくなるなんて寂しいわ〜」
「あたしもだよ…でも過去のルッスに会いに行くからね」
「絶対よ!」
筋肉で引き締まった腕でルッスは、力強く抱き締めてくれた。
ちょ、これかなり痛い。背骨が曲がる!というか口から体の臓器が…うぅ。
「名前先輩ー十年前にはまだミーはいませんけど、忘れないでくださーい」
「え?フランいないの?」
「大人の事情ってやつですよー」
「よく分かんないけど…忘れないよ」
十年前にフランがいないなら、誰が霧の幹部してるんだろう…。でも、きっとまた会えるよね!
「十年前にベルはいるの?」
「うししっ、当たり前だっつーの。カエルと一緒にすんな」
「ごめん、ごめん。じゃあベルには会えるね」
「なんでそこで名前先輩が堕王子なんかに謝るんですかー?」
「堕王子って言うなってー…の!」
グサッとフランの背中にナイフが刺さる。いや、このときでも2人はケンカしちゃうのか!あぁ、でもこのケンカが見られなくなるのも少し寂しいかも。
「ザンザスさん、いろいろお世話になりました。レヴィさんも」
「も、とはなんだ!?も、とは!」
「るせぇ」
「ぐあっ…ぼ、ぼすぅ」
ザンザスさんのグラス投げは相変わらずすごいな…。十年前のザンザスさんも果たしてそうなの?…あたしもいつか飛んでくるかもしれないのか!
「名前」
「はっ、はい!」
「過去に戻ったら余計なことはするな」
「…でも必ずみんなに会いに行きます。それまで待っててくださいね?」
「はっ」
微妙だけれど口角を少し上げて笑ってくれたザンザスさんを見て、安心した。
きっと過去に戻ってから出会うザンザスさんも、優しい人なんだろうな。
「みんな、本当にありがとう!」
最後に自分の精一杯の笑顔でお礼を言い、談話室を後にした。
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…今日までいろいろあったなぁ。スクアーロに出逢って、ヴァリアーのみんなに出逢って…。スクアーロに恋をした。
本当にあっという間の一週間だった。でもその短い間スクアーロはあたしをいっぱい愛してくれた。数えきれないほどのキスもした。
そうやって一週間のことをひとつずつ思い出していると、あっという間に部屋に着いた。
「スクアーロ!」
「う゛ぉおい、遅かったじゃねぇか」
「みんなに挨拶していたら少し、ね」
最後はこの部屋にいたいというあたしの我が儘を、スクアーロはすんなり受け入れてくれた。
一週間分のスクアーロとの思い出が詰まった部屋。…きっとまた、この部屋に戻ってこれるよね?十年前のスクアーロと一緒に。
「スクアーロ、本当にありがとう」
「…名前、てめぇとの約束は忘れねぇから、オレとの約束も忘れるなよ」
「…必ず過去のスクアーロに逢いに行く」
「待ってるからなぁ」
目を閉じて、あたしはスクアーロの腕に身を預けた。
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