「明日はもうスクアーロとお別れだね」
ルッスが用意してくれた最後の夕食はどれもあたしの好きなものばかりで、溢れそうになる涙を堪えるので必死だった。
「あたし、未来に来れてよかった。スクアーロに出逢えたから」
「…そうかぁ」
「ねぇ、ひとつだけお願いしてもいい?」
「ん゛」
2人で出たバルコニーからは、あのときに行った丘と同じくらいの星が輝いていた。
手すりにもたれかかって、スクアーロを見つめた。
「…生きて」
「名前、」
「十年後のあたしもスクアーロには生きてほしいって思ってる」
「…分かった。少しだけ十年後の名前を待たせることになるなぁ」
「うん。スクアーロが来るのをずっと待ってるよ」
あたしがいない世界に生きる意味がないなんて、もう言ってほしくない。スクアーロを必要としている人はきっとたくさんいるから。
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「あ、あと一分」
「なにがだぁ?」
「ちょっと待って…30、29…」
十年後の名前が気に入っていた腕時計を見て、カウントダウンしていく名前。
なにが始まるっていうんだぁ?もうすぐで12時。名前が帰る日になる。
「…2、1、0!ぶおんこんぷれあん、スクアーロ!」
笑顔でオレを抱きしめる名前。オレは驚いて言葉を失った。
そういえば、名前が過去に帰る日とオレの誕生日が重なってたんだなぁ。
「えっと、あたしに用意出来るものって何もなくて…だから一番にスクアーロにおめでとうって言いたかったの」
「名前…ありがとうな」
「生まれてくれてありがとう、あたしのこと愛してくれて…ありがとう」
誰にどんな言葉を貰っても、名前に言われるのが一番嬉しいに決まってる。もしかして過去から来た名前自身がオレにとってプレゼントなのかもしれねぇな。
夜空に輝く星と月が、オレたちを見守っているような気がした。
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