「なぁ、王子になんかねーの?」
「何か、というと?」
「はぁ?お前今日何の日か分かってんの?」
「2月14日……あれか、レヴィの誕生日から三ヶ月後」
「ちっげーし」
今日は何の日かって言われてもねぇ…。まったくと言っていいほど思いつかない。
そういえば、ルッスが朝にチョコレートをくれたような…。あぁ、今日はあの日か。
「イタリアでは逆なんじゃないの?」
「名前は日本人だろ?」
「ベルはイタリア人じゃん」
「とりあえずチョコ渡せよ」
「無理だよ、作ってないもん」
昨日まで長期任務だったし。だいたいなんであたしがベルにあげなきゃいけないのよ。
別に付き合っているわけじゃないし。好きかどうかって言われたら、別の話になるけど…。
「あ、そうだいいものあるよ」
「いいもん?」
「ん、」
あたしはポットに入っていたココアをベルのカップに注いだ。
「ココアじゃん」
「ココアもチョコも原料は同じだよ、きっと」
「てんめー」
「いや、ナイフ投げないでよ」
なぜ、ベルが怒ってるのかまったく分からない。いいじゃん、ココアはおいしいし温まるし。
「…うししっ良いこと思いついた」
「ん?」
「名前、目閉じてみ」
「……いや、意味分かんない」
「サボテンにされてーの?」
「喜んで目を閉じますとも!」
ギラリとナイフを光らせて笑うベルは恐ろしい。ここで断ったら、間違いなくベルのナイフとの追いかけっこが始まる。
「んー…まだぁ?」
「そんなせかすなって」
目を閉じて待っていたら、いきなり唇にぷにっとした感触がしたかと思うと、閉じていた唇が割られて甘いココアの味がした。
「んむぅ、…はっ」
それがベルの唇だと理解したのは口を離されてからだった。
「ししっ、もーいっかい」
いきなりのことに思考が追いつかず、またベルの唇があたしにひっついた。
流し込まれるココアの行き場はなく、全部あたしが飲み込んでいく。その後にベルの熱い舌が入ってきて、逃げようとするあたしの舌を絡めて離さない。
自分から漏れる甘い声に、なんとも言えない羞恥がこみ上げてきた。
「ぷっはぁ、何すんのよ!」
「顔真っ赤じゃん、そんなに気持ちよかった?」
「うるっ…さい!!」
なんだ、この堕王子。人にキスしといてその余裕の笑み。遊びか、この野郎。
「なぁ、いい加減王子の気持ちに気づけよ」
「え?」
「好きでもねー奴にキスしねーよ」
「なっ、そっそれって…」
「もっかい、キスしていい?」
我が儘な王子さまにあたしは嫌とは言えなかった。どうやら、いつのまにか王子さまの虜になっていたらしい。
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真白は一体何がしたいんだろう(^ω^)?
by 真 白
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