「昨日は死ぬかと思った…」


あの後、スクアーロ先生とベルで校内探検していたけど、学園長のことが心配でたまらなかった。


「今度会ったら謝ろう、うん」

「独り言激しいですねー」

「なんですとっ!?」


教室の前でうだうだ呟いていたら聞かれた。

しかも隣の席の…えっと、フ、フラ…フランソワ君。


「フランですー。頭大丈夫ですかー?」

「え、寝ぐせとかある?」

「大丈夫じゃなさそうですねー」


おかしいな、朝ちゃんとセットしてきたのに…。鏡で確認するあたしをフラン君は放置して、教室に入っていった。


「てめぇ、朝から通行の邪魔してんじゃねぇぞぉ」

「…ダンボールが喋った」

「どう考えてもダンボールは喋らねぇだろぉ!!」


ダンボールの横から顔を出したのはスクアーロ先生だった。

あたしもついにダンボールの気持ちが分かるほどレベルアップしたかと思ったのに、残念だ。


「そんなレベルアップしても嬉しくねぇだろ」

「先生、人の心を読むのはプライバシーの侵害です」


「全部口から出てるお前が悪い」

「もがもが」


口を塞いでみたが、スクアーロ先生はため息をついて自教室へ行ってしまった。

仕方なく、あたしも教室に入って誰か友達を見つけようと思ったけど、すでに何個かのグループが出来ていた。


「やばい、完璧に出遅れた」


これもすべてスクアーロ先生のせいだ。後で殴っておこう。

とりあえず、自分の席に着いて横の人に話しかけることにしよう。

…あ、横ってフランソワ君じゃん。


「ねぇ、フランソワ君」

「フランって何回言えばいいんですかー?」

「名前くらいどうでもいいじゃん」


「貴女って本当に残念な人ですねー」

「貴女じゃなくて蓮野雨芽。雨芽でいいよ」

「名前なんてどうでもいいって、言ってませんでしたっけー」


とりあえず、フランソワ…フラン君とはこれから仲良くなればいいや。

必要なのは女の子友達だよ。…もしかしてあたしって人見知り?

いや、そんなバカな。近所の人にだって挨拶くらい出来るぞ、この野郎。


「蓮野………雨芽、ちゃん?」

「うぇ?」


前の席にいた茶髪のショートヘアーの女の子がこっちを向いていた。

わぉ、この子の笑顔が天使じゃないのか。


「あたし、笹川京子って言うの!よかったら友達にならない?」

「こここここここんなあたしでいいのなら、ぜひ!」

「ふふふっ、雨芽ちゃんっておもしろいね」


やばい、天使と友達になってしまった。あとで誰かに自慢しよう。


「あ、ハルちゃーん」


京子ちゃんが呼んだ先には、これまた天使じゃないかと思う女の子がいた。

この学校ってもしかして、美男美女の集まりなのか!?なんかあたしって、場違いかもしれない…。


「雨芽ちゃん、三浦ハルちゃんって言って中学のときからお友達なの」

「ハルと言います!今はまっている言葉はデンジャラスです!」


「デ、デンジャラス…」


なんだか不思議な友達が出来てしまった。でもおもしろそうな子…かな。

京子ちゃんとハルちゃんと話していたら、授業開始のチャイムが鳴った。



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11/03/28







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