ミーン、ミーン。夏本番、セミの鳴き声がひっきりなしに聞こえてくる。うるさい、睡眠妨害。せっかくの夏休みがセミの鳴き声で丸つぶれじゃんかよー…。

あれか、新手のいやがらせか。引っ越しー引っ越しーさっさと引っ越しーみたいな。

ミーン、ミーン。ミーン、ミーン。ミーン、ミーン。ミー…



「うっざい!なに、地球温暖化よりも深刻なのってセミ問題だよね!」

「…う゛ぉおい」

「…ん?スクアーロ先生?」

「さっさと起きろぉ」



そっか、電話の着信セミの鳴き声にしてたんだ。で、起きれないから先生にモーニングコールを頼んだっけ。



「せんせー…いまなんじー…ぐぅ」

「寝るんじゃねぇ!!もう八時半だぁ!」

「んぎゃっ、…耳痛い」

「さっさと着替えて教室来い」

「らじゃー」



んーもう起きなきゃいけないのか。朝ご飯を食べないとあたしは学校行けない…。
あ、食堂で食べればいいんじゃん。



「そうと決まればいきますかー…」



のそのそと今では夏服となった制服を着て家を出る。
カギはなくしたらあれだから、毎日ポストに入れている。



「雨芽ちゃん、おはよう」

「梅ばぁちゃんおはよ、今日はいい天気だね」



今日も縁側でのひなたぼっこが似合う梅ばぁちゃん。

本当の名前は知らないけど、みんなが梅ばぁちゃんって言ってるから梅ばぁちゃん。春夏秋冬、毎日ひなたぼっこをしている。あたしもあんな老後を過ごす希望者。



「そうやね…明日の夏祭りも晴れてほしいわ」

「そっかあ、もうそんな季節かぁ」

「今年も射的屋の康さんを泣かすんかね?」

「もちろん!康さんの射的商品はあたしが今年も独占するよ」



夏祭り、かぁ。明日で補習も終わるし、スクアーロ先生に連れて行ってもらおう!そして、奢らせよう。



「じゃあいってきまーす」

「いってらっしゃい」




xxx




「これで遅刻何回目だぁ?」

「んとー…補習が始まってから毎日回目」

「毎日回目じゃねぇ、九回目だぁ」

「9は英語でないんっ!」

「ないんじゃねぇ、nineだ。てめぇ、小学校からやり直して来い」

「昨日までは中学だったのに!?ワンランク下がった!」



中学からやり直せと言われるならまだマシだった。
…小学校。ランドセルなんてもう捨てちゃったよ。



「というか、なんで朝から食堂なんだぁ?」

「朝ご飯まだだったから、先生に奢らせようと思って」

「…はぁ」



うわ、人の前で盛大にため息つきやがった。ため息つくと幸せが逃げるんだよー。

先生なんか不幸せになってしまえ。



「私は一度も朝食を作ったことがない。英作しろぉ」

「What?先生、朝食作ったことないの?」

「違ぇだろ!!英作しろっつてんだ!」

「I have never made the breakfirst .」


あたしのこの9日間の努力を無駄にしてもらっては困る。
朝から夕方まで先生にしごかれた甲斐があった。



「ん゛、これで中学は卒業だなぁ」

「ふっふっふ、恐れいったか」

「お前…今からやっとスタートラインだろぉが」

「でも補習は明日で最後じゃん」

「だからてめぇには特別課題を出してやる」



ニヤニヤ笑うスクアーロ先生。ドSめ。そんな課題、先生にバレないように生ゴミと一緒に捨てるし!



「捨てても無駄だからなぁ」



…あたしっていつから先生と以心伝心っていう設定になったんだろ?というか、本気で夏休み潰された。



「先生、あたし今なら背負い投げが出来る気がするから練習台になって」

「やめとけ」

「うっざ、冷めた目で睨まれるのが一番傷つきます」

「お前も傷つくこととかあるんだなぁ」



実を言うと先生に口で勝ったことなんて、数えれるくらいしかない。
だからいつか口負かすリストの一番目はスクアーロ先生だ。



「お前ら毎日飽きないねー」

「あ、ベル」

「う゛ぉおい、ベルがこんな朝早くに起きてるなんて珍しいじゃねぇか」

「んー寮で寝てたんだけどさ、セミの鳴き声がうるさくってな…ちょっと駆除してきた」



いいなー寮生活。確かフランもそうだったような…。今度遊びに行こう。あわよくば、居候も夢じゃない。



「そういやぁ、お前朝変なこと叫んでたなぁ」

「変なこと?」

「雨芽っていつも変じゃね?」

「それは否定しねぇが、いつもよりひでぇんだ。セミ問題がどうのこうのってよぉ」

「いや、否定してよ」



セミ問題がどうのこうの?んー朝第一にそんな発言するなんて変人の域超えてる。


ミーン、ミーン。


「ん?まだ駆除出来てねー奴いたのかよ」


ミーン、ミーン。


「夏はこれだから集中出来ねぇ」


ミーン、ミー…ブチッ。


「もしもしーオレオレ?あ、もしかして山田君?うん、うん、車が壊れた?しょうがないなー昔のよしみで貸してあげる。ATM?えっとー」

「てめぇそれはオレオレ詐欺だろぉ!!!」

「ああ!何すんのさ、山田君の車がー」

「つーか雨芽の電話の音うっざ。そんなん毎日聞いてたらノイローゼになるし」



先生に電話を切られて没収された。ついにここまでするようになったのか…このカス鮫教師。



「…この着信変えろぉ」

「よくそれでイラつかねぇよな」

「え?なんで?今はやりのイラ可愛いだよ」



この時の二人の盛大なため息は、いったいどれくらいの幸せを逃がしたんだろう。




(イラ可愛いってはやってんのかぁ?)

(ぜってー雨芽の中でだけだろ)



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英文は適当です\(^o^)/

11/04/14






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