「はぁー…疲れた」
あのあとなんやかんやと騒いで、やっとのことで休憩をもらえた。
「あれ?制服がない…更衣室に忘れたのか!」
メイド服とやっとおさらば出来ると思ったら、制服を更衣室に忘れてしまった…あたしって一体…。
「しょうがないから取りに行こ…」
教室の裏の扉から廊下に出て、あたしは更衣室へ向かった。
xxx
「ねぇねぇーそこのメイドの子!」
「へ?」
「ちょっと俺らに学校案内してくんない?」
…なんだこの金髪三人組。
見るからにチャラッチャラしていてあたしの苦手な分野。
「いや今急いでるんでー…」
「いいじゃん、俺らと遊ぼうよ」
いやいやいや、なんで腕掴んでくるんだよこのチャラ兄。雲雀さん呼ぶぞ!
「すみません!本当に急いでるんで」
「あ、おいっ!」
掴まれた腕を思いっ切り振り払って、あたしは更衣室まで猛ダッシュした。
あたしの足の速さはご近所ではちょっと有名だからね。
遅刻ぎりぎりの雨芽という名前があるほどよ!
「ふぅ、逃げ切れた…さてさて制服…」
ガチャ。ドアが開いた音がした。
…誰だろう?きっとあたしみたいに可哀想な衣装を着せられた子に違いない。
「みーつけた」
「これ、さっきの子?俺けっこータイプなんだけど」
「ちょま、なんで入って来てるんですか!?」
ここ女子更衣室なんですけど!なんでさっきのチャラ兄がここに入って来てんの!
「出てって下さい!」
「自分の格好見てから言うんだな〜メイドちゃん?」
「っ!?」
まだ着替え途中で上半身はブラとキャミだけ。
舐めるようにあたしの身体を見てくる男たち。…気持ち悪い。
「誰か助けーむっ!」
「助けを呼ぼうったってそうはいかねぇよ」
一人の男に口を塞がれた。嫌だ、嫌!!!あたしこのまま犯されちゃうの…?
「なぁなぁ、写真撮っておこーぜ」
「そうだな、」
ケータイの画面を近づけてニヤニヤする男。もう一人の男はキャミを捲り上げてきた。
「うむぅ、んっ」
必死に首を横に振るけれども、男たちは動きをやめない。
誰か助けてよー…!
「ゔぉおい、そこで何をしてるんだぁ?」
「あぁ?てめぇ誰だよ」
低く、妙に落ち着いた声が聴こえた。ぞくりと背筋に悪寒が走る。
ドアの方に目をやると、スクアーロ先生が立っていた。
「オレかぁ?オレはなぁ、この学園の教師だ」
「教師?そんなもんボコればいい話だろ?…おいっ!」
一人の男の合図でスクアーロ先生に二人の男が襲いかかった。…先生危ない!
ドゴッ、グギャ、バキ。
「なっ!?」
「オレの生徒に手ぇ出したからには、たたじゃすまねぇぞ」
一瞬にして二人の男を殴り倒したスクアーロ先生。
え、先生ってもしかして喧嘩とか得意分野だったんだ。
「このクソ野郎!」
残った男が先生に殴りかかるが、先生はそれをスルリと交わし男の腹を思いっ切り殴った。
「ったく、弱ぇ奴らだぜ…大丈夫かぁ?」
「う、うん……怖かっ、た」
「これでも羽織っとけぇ。立てるか?」
「足が…震えて」
ふわりとスクアーロ先生が着ていた上着を羽織らされたのはいいけど、足がガクガクして立てない。
「しょうがねぇなぁ…ほらよ」
「え?」
あたしの目の前でしゃがみこんで背中を向ける先生。まさか、この背中に乗れと?
「早くしろぉ」
「…ありがと」
先生の背中に触れて、さっきまでの恐怖心はどこかへ消えた。それと同時に安心感からか、涙が溢れた。
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11/04/06
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