痛みを感じたところに手をかざしてみれば、ドロッとした自分の血がついていた。きっと男が刺されると同時に、あたしを刀で刺したのだろう。
あ………やばい……
気が遠くなってきた…。
あたしこのまま死んじゃうのかな…
「…!…名前…!」
ベルの声が微かに聞こえる。
そういえばあとで伝えようって思ってたんだけど、やっぱり伝えたいと思ったことは先に言うべきとか…人間って死に際にこうやってたくさん後悔するのかな…
「……ベ…ル…」
「名前!」
あたしは残っているかぎりの力で瞼を開いた
「ベル…ごめんね」
「なんであやまるんだよ」
あやまったら自然と目頭が熱くなっていて、涙が頬を伝った感覚があった
*****
俺はすぐに現実を受け止め、紫織の身体を揺すって何度も声をかける
「名前!!名前!」
「……ベ…ル…」
「名前!」
「…ごめんね」
「なんであやまるんだよ」
とても弱々しい声で俺の名前を呼んできたと思ったら、なんか知らないけど紫織があやまってきた。名前、全然悪いことしてないはずなのに……
「だってベル、すごい怒ってたじゃん。それ、あたしのせいかなぁって思っちゃってさ…」
「……」
俺が勝手に嫉妬してムカついてただけなのに、そんなこと気にしてたのかよ…。
「それでね、ベルに嫌われないようにこの任務で頑張ろうって思ったのに、こんな状態になっちゃったとか、バカみたいだよね」
自分自分を責め続ける名前をみていると、たくさんかけてあげなきゃいけない言葉があるはずなのに、全然思いつかない。
「それに、任務も失敗して何もできない人材なんて、ボスもすぐに飽きちゃうのかなぁって思ったら……」
いつのまにか、名前は顔がグシャグシャになるくらい泣いていた。
「そんなことねぇって」
「…ベル…?」
「これから修行してって強くなって追いつけばいいんだよ…。名前は充分、力あるしその気になればすぐに追いつけるって」
俺は不覚にも名前を抱きしめていた。名前の荒い呼吸音と涙と一緒に漏れている声とが静かなこの空間に響きわたった…
( 飽きたら捨てる )