「……」
「……。」
俺と名前は背中合わせで湯舟に浸かっている。お互い黙っているせいか静かだ。静かすぎるくらいだ
そんななか、名前の心臓音が背中から伝わってくる。名前の心臓音がかなりはやくなってるぜぇ。まぁ人のこと言えねぇがなぁ
「スクアーロ...」
「何だぁ?」
沈黙の中、最初に口を開いたのは名前だった
「今日、遅くまでの任務じゃなかったの?」
「遅くなるはずだったんだが…早めに終わらしたんだ」
「そっか...それでこういう結果ってわけだよね、フランに会わなかった?」
「風呂に向かうときにすれ違ったが、『お疲れ様でしたー』としか言われなかったから、風呂に誰も入ってないかと思ってよぉ」
「え?!フラン、絶対知ってるはずだよ!!だってフランにお風呂入ってくるって報告してから入ったもん...」
「っ!!あのクソガエル、知っててわざと!!」
改めてフランが腹黒でこういうことにも、計算高いことを思い知れた
…そういえば名前のやつ、不思議な能力を持ってやがったなぁ
「名前」
「ん、何?」
「お前、不思議な能力持ってるよなぁ?」
「不思議な能力?」
「俺とフランとベルが俺達の任務先で名前を見つけたとき、お前、光放ってたよなぁ?」
「あぁ、あれね。あたし自己再生能力があるんだ」
自己再生能力..だとぉ?!
今の時代、匣兵器で回復するやつならいっぱいいるが、自分自身で回復するやつは初めてだぜぇ...
「お前、ほんとに人間かぁ?」
「に、人間だよ!何当たり前のこと聞くのよ」
確かに、俺は何を聞いてるんだぁ…
「だけどよく言われる、匣かなんかの力じゃないのか、ってね。けど好きでこの能力を持ってるわけじゃないしね」
雨芽はそう言うと立ち上がり一瞬悲しい顔をしたが、すぐ自慢の笑顔をみせて湯舟からでていく
「う"ぉい..それはどういう...」
「能力についてはいつか詳しく教えるよ」
「……。」
「あたし、結構な時間浸かったからもうでるね」
「お、おう。」
俺は名前について気になって仕方なかったが、名前がロッカールームに行って一人になってから、二人で同じときに湯舟に浸かったことを考えたら恥ずかしくなった
( 理解不能と羞恥心 )