コトン、夜中の2時に物音がした。誰か来たのかと思って、ベットから降りて玄関に向かった。
ぐいっと、いきなり誰かに後ろから抱き締められた。筋肉質だけど、けして太くはない腕。あたしはこの腕を知っている。
「…武?」
抱き締められたとき、ふと、血のにおいがした。だけど、あたしはそれに気づかないふりをした。それを言ったら、武が離れてしまうから。
「おかえり、どうしたの?」
抱き締める手を全然緩めない。むしろ、その手は強くなった。話しかけても反応しない。力強く、だけど繊細なものを包むようにあたしを抱き締める。
「泣いてるの?」
武の腕が震えていた。その震えに合わせるかのように、あたしの肩もだんだんと武の涙で濡れていった。
「わりぃ」
「なんで…謝るの?」
名残惜しそうに、武があたしから手を離した。その日初めて見る武の顔は、とても苦しそうで切ない顔だった。
こんな武、初めて見た。いつも笑顔であたしの傍にいてくれたから。
「何かあったの?」
「怖いんだ」
「え?」
震える手であたしの顔を包み込んで、声を絞るように武はあたしに話した。あたしはその話を聞いている間、うなずくことしか出来なかった。
「最近の俺さ、人を殺してばっかなんだよな」
「うん」
武のことは中学校のときから知ってるから、どんな仕事をしてるのか知ってる。
マフィア、ボンゴレ。ツナくんの代になってから争いは少なくなったって聞いたけど、まだまだ殺しは終わったわけじゃない。
「でさ、人を殺すのに躊躇がなくなってきちまってさ」
「…うん」
「俺、いつか名前のことも殺しちまうんじゃないかって、不安なんだ」
「武」
そんなことを言う武の顔は、すっごく悲しそうだった。下をうつむく武の顔をそっと包んだ。
「大丈夫だよ、あたしは死なない」
「名前」
「だからさ、武」
「ん?」
「あたしから、離れていかないでね?」
あたしの頬にしょっぱいなにかがつたう。武は黙ってあたしを抱き締めた。
震える君の手を包んで
--------------------------------------------------------------------
武やボンゴレのみんなが殺しに躊躇なくなるのは怖いです(∵`)真白はそうならないよう願っています←
by 真 白
→