あたしは今、真っ白な銀世界にいる。いや、正しく言えばヴァリアーの屋敷の庭なんだけれども。目の前には、愛しい恋人のフランくん。

…ほんの数分前まではそうだった。あたしは、ついさっきあった出来事を思い出していた。


「名前さーん、外行きませんかー?」

「…フラン、何考えているのよ」

「だって雪積もってますよー」


この冬一番の冷え込む日。あたしは、自室に特注でつけさせたこたつ様で、ぬくぬくと久しぶりの休暇を楽しんでいた。

こんな寒い日はみかんを食べて寝よう。そう決心していたところだった。


「早くいきましょーよー」

「…フラン、日本では寒い日にはコタツでみかんという文化があるの」

「メタボリックシンドローム」


フランがあたしを指差して、乙女の禁句ワードを言いやがった。いや、あたしは決してメタボでないはず。でも昨日体重量ったら増えてた。それに心なしか顔が丸い。


「…行く」

「わーい、行きましょー」


無表情で言われても困るけど、フランはこういう子だ。それに、自然とあたしの手をつないで歩いてくれるから、頬も緩む。可愛いなー、とさっきまでは思っていた。


「さーむーいー!!!」


外に出ると、雪は約20cmくらい積もっているし、風はびゅーびゅー冷たく吹いてるし、雪かきをしている部下たちの手や鼻は真っ赤だし、ブ−ツは既に濡れて気持ち悪い。


「名前さーん」

「何よ…って、へぶぅ!?」


ありえない、この寒さの中フランの野郎は雪玉を投げて来やがった。しかも痛い。え、何?これ、喧嘩売られてるの?やり返そうと思っても、寒さで体が重くて動かない。


「名前さん?」

「へっぷち」


くしゃみが出だぞ、おい。これって完璧に風邪引いたのでは?体調管理も出来ないようじゃボスに怒られる。そんなこと考えているうちに、なんかくらくらしてきた。

そういえば、今日は朝から体が重かった。瞼がだんだんと重くなって、最後に聞いたのはフランの声ー…。

あーあ、せっかくフランが誘ってくれたのに…何やってんだか。でもなんか体がふわふわする。誰かに抱き締められている。体温が伝わって気持ちいい。


「んむぅ?」


目が覚めたら、あたしは自室のベットにいて、フランがあたしを抱き締めていた。


「ー…ん、起きましたかー?」

「フラ、…ン」

「熱があったらしいですよー。いきなり倒れてビックリしましたー」


あたし熱があったんだ。そりゃあ熱があるのに、あんな寒さの中で遊ぶのは無理があるよね…。


「すみませんでしたー」

「へ?」


フランが謝った。こんなことめったにない。もしかしたら、明日は大雪でこれ以上寒いかもしれない。ボスに言って休み貰わないと。


「全部聞こえてますけど」

「いや、だって…」

「名前さんが風邪引いてたのに、誘ってしまいましたー」


しょぼーんという効果音が似合うくらい、フランの落ち込み方は可愛い。なんでこいつ男のくせに、こんなに可愛いんだ。


「大丈夫だよ、フラン」

「ですけどー」

「フランと2人っきりになれて、嬉しかったし」


ねぇ、だからお願い。そんな顔しないで、いつものポーカーフェイスに戻ってよ。そして、あたしの風邪が治ったら今度は2人で、イルミネーションを見に行こうよ。


「好きだよ、フラン」

「…ミーは愛してますけどねー」


曇りガラス越しの

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初フラン君(^o^)実は難しいフラン君の口調なのですがどうでしょうか?

by 真 白



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