Valentin's Day | ナノ
for Pauly
「パウリー」
名前の声が聞こえた気がした。いやいや気のせいだろ。ここ俺の家だぜ。ちゃんと寝る前に鍵はしめたはずだし、窓だってきちんと閉めてある。そうだ、いくら名前が恋しいからって、そんな幻聴聞こえるはずねェ。
「起きてパウリー!脱がすよ!」
「破廉恥いいいいい!つか、おい!ズボン!脱がそうと、する、なっ!」
俺の幻聴なんかじゃなかった。ほんとに居やがった。しかもパジャマにしてた俺のズボンを引きずり下ろそうとしてやがる。慌てて腰の部分を掴んでずり上げる。ぷげ、変な声を出して名前がベットにダイブしてきた。普通抱きとめてやるべきなんだろうが、とてもじゃないが俺にそんなことはできない。慌てて避けた。
「い……た」
「わ、わるかった!大丈夫か!?」
不法侵入してきたうえ、起き抜けに破廉恥行為をかましてきた名前のが絶対悪いだろうが、俺も意図的に避けちまったわけだし一応謝っとく。無表情で起き上った名前はベットから降りて、何やらゴソゴソしはじめた。赤い紙袋から銀色の皿みたいなものを取り出して、それを両手で持ったまま俺に跨った。
「なっ、なにしてんだよ!!」
「何って、ほら、バレンタインだからね。かわいい彼女が、チョコレートのプレゼントだよ。トリュフも生チョコもガトーショコラもチョコレートケーキもチョコプリンもチョコクッキーもとりあえず考えられるものはあげちゃったからね。後は私ってことで」
いやいやいや、そのボールの中身おれにぶちまけるつもりだろ!いいじゃん別にどっちにぶっかけようが。破廉恥いいいい!
そんな押し問答をしていたら、名前が持っていたボールが盛大にひっくり返った。中のチョコレートは名前に全部かかって、かかって、かかって……。
「あー自分にかける気は一切なかったのに。……ちょ、起きてる?パウリー」
I send my special love to you.
(特別な愛をあなたに送ります)