Valentin's Day | ナノ
for Shizuo



「よし、いつも元気に取り立てを頑張ってくれている君らにプレゼントをあげよう」


名前さんがいきなりそんなことを言い出して、事務所の机の上にぽん、ぽん、と小さな袋と大きな袋を置いた。どちらもリボンがつけられていてとてもファンシーだ。俺はトムさんと顔を見合わせて、そういえば今日はバレンタインだったかと思い出した。どっち取る?そうトムさんが言ってどっち取る?と聞かれたので、俺は小さいほうを手にとって名前さんに礼を言った。トムさんはさっそくリボンをほどいて中を開けていた。俺もそれに倣って袋を開けようとした。


「あ!」
「え?」
「あ、いやいや、なんでもないよ?うん。あ、私書類整理しないといけないんだった〜」


名前さんは焦ったように事務所から出て行ってしまった。書類の整理って……、名前さんの仕事机はここにあんのに。


「なんだァ?ありゃ」

「……さあ」

「……おいおい、まじかよ」


トムさんが袋を覗いて落胆したような声を出したので、自分もトムさんの袋の中をのぞいてみる。そこに入っていたのは、一本10円のうまい棒チョコ味だった。たぶん、20本くらい入っている。お前はなんだった?


「トムさんがうまい棒なら、俺はチロルっスかね」

「袋の大きさ的になー」


袋を開けたら、中にまた箱が入っていた。不思議に思って取り出すと、箱には菓子に詳しくない俺でも知っている有名な菓子のブランドのロゴがはいっていた。うお、これコンビニで見たら800円近くしたぞ。


「なんか、まだ、入ってる」


箱の下に隠すように入れられていたメッセージカードを取り出す。なんとなくトムさんには見せないほうがいいのかと思って、トムさんもそれを察してくれたみたいで覗き込んでいた顔を引っ込めてくれた。二つ折りにされたメッセージカードを開いて、中を読む。数秒かかって意味を理解したあと、信じられなくてもう一回読んだ。もしかしてこれはトムさんあてじゃねェのか、疑ったが、きっちりしたの方に俺の名前が書いてあった。どんどん顔が熱くなっていく。


「静雄、お前、真っ赤だぞ」

「………いや、」



"I love you."
(愛してます)




 


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