Valentin's Day | ナノ
for Sasuke
「………」
「………なに」
「………え、ほんとに?」
「………だから何が」
本当に今日が何の日か分かっていない様子の名前に目の前が真っ暗になった気がする。よくまあ、テレビやインターネットやクラスの女子やらがあれだけ騒いでいて忘れていられるな。俺様は思わずorzの格好を取りそうになって、慌てて首を振った。だめだめ、なに考えてんだほんと。
「え、ちょ……今日なんの日だと思う?」
「佐助しつこい。わけわかんない」
一応、確認を、と恐る恐る聞いたら、はっ、という効果音がすごくよく当てはまる顔で名前は笑った。うそだろおおおおおおおおおおお!!!こんどこそ俺様は両手両ひざを地面について項垂れた。旦那なんかは朝からチョコレートをたくさん、そりゃもうたくさん貰ってうきうきしてて、伊達のヤローなんかも負けず劣らず貰ってて、でも俺様には名前っていうかわいいかわいい彼女がいるから、他の女子のチョコレートは断ってて。猿ひとつも貰ってねェじゃねーかフぷぷぷとか笑ってくる伊達に、俺様は本命の子一人からもらえればいいんですーとか言っちゃって……。
「佐助?」
「……や、何でも、ない、ぜ!うん、何でも」
頬に冷たい何かが伝っている気がする。いや、比喩表現だからね。確かに名前はいろいろ無頓着なところがあって、それすらかわいいと思ってたけど、けど。
名前から視線を外して深いため息をついた俺様の頬に、なにかが刺さった。は、刺さった?
「いた」
「嘘だよ。ちゃんとあるよ」
ふふふ、と柔らかく笑った名前が持っていたのは、ピンク色のかわいらしい箱。ああ、箱の角が俺様の頬に刺さってたのか。この箱が。………え!?
嬉しくて嬉しくて、教室だってことも忘れて名前を抱きしめた。
Happy Valentine's Day with Lots of Love.
(たくさんの愛をこめて、バレンタインデーおめでとう)